第十四章 霊媒師 ジャッキー

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「黒十字様からご依頼を頂いて、すぐに社を出発したのですが交通事情等もあり到着までに頂いたお時間は約45分でございました、」 当日に依頼して45分で到着って相当早いと思うんだけど、なんたって“5分で来い!”な依頼者だから不満なのだろう。 「怪奇現象にお心を痛める黒十字様の為、速やかな対応を目指し努力させて頂きました。ですが、お待ち頂いている間の黒十字様のご不安や恐怖を想像いたしますと……さぞかし苦しかった事と存じます」 僕は黒十字さんの辛さに共感してますよと匂わせつつ、到着時間に対するクレームには謝罪しなかった。 だって本当に最速だもん。 (……アンタらT市だっけ?) トーンが下がった。 少し軟化してくれたのかな? そうだといいんだけど…… 「さようでございます」 僕だけが喋っていたのでは意味がないので、あえて短い返事に留める。 黒十字様のお話が聞きたい。 (……まぁ、T市からココまで、どうやったって5分じゃ着かないよな。わかっちゃいたんだけど、家ん中がすごくてさ。早くなんとかしてもらいたくて気が焦ったんだ。……い、いや、誤解するなよ!? べ、別に俺はそんなに怖くはないんだぜ? お、男だし、これくらいの修羅場は過去いくつも潜ってきた! ほ、本当だぞ! だた、ディニエルは女の子だ。彼女を怖がらせる訳にはいかないだろう?) ディニエルさんって____エルフの? (男としてディニエルを守りたい。だから昨日は徹夜で祓い屋を探した。なるべく近くて、なるべく安くて、口コミレビューの高いトコを絞り込んで見つけたのが……アンタの会社、こもれび(・・・・)だ) おくりび(・・・・)です。 (頼む、もうウンザリなんだ。早くなんとかしてく……ヒッ! まただ! また聞こえた! 天井から変な音がしてる! ヒィィィ! もうやだーっ! 助けてくれー!!) プツッ! 「あ、切れた」 黒十字様の叫び声を最後に通話が途絶え、液晶を見ると既にホーム画面に切り替わっていた。 「ジャッキーさん、水渦(みうず)さん、中でまたポ現が起きたようです。助けてくれと言ったきり電話が切れました」 簡単に報告しながら、さっき覚えたばかりの“ポ現”を使ってみると……一端(いっぱし)の霊媒師になった気分になるから不思議だ。
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