第十四章 霊媒師 ジャッキー

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開けたドアの向こう側、そこは想像以上の空間だった。 まず暗い。 昼間だというのに閉じられたカーテンは光を遮り、春の陽射しを頑ななまでに拒否している。 この部屋の光源はパソコンのモニターが発する青みがかった光だけ。 デュアルに並んだ大きな画面と、その横にある開かれたノートパソコンが無機質に灯っていた。 そのブルーライトに照らされた室内は、廊下以上のひどい有様だった。 シングルとおぼしきパイプベッドの上にはグシャグシャな毛布と掛布団。 敷布団は、お菓子やパンの空き袋といったゴミの数々と、ワイヤレスキーボードにヘッドホンに消臭スプレーなど、統一性のないモノで埋もれてしまって、ほとんど見る事はできない。 床も同様だった。 乱暴に破かれた(から)の宅配袋、美少女キャラが表紙の雑誌の山、大量のカップ麺の空容器に蓋の締まっていない飲みかけのペットボトルが複数本、僕でさえ知っている最新のゲーム機器各種とそのコントローラー等々。 そして目線を上げれば壁一面、天井まである本棚にはギチギチに並んだゲームソフトと美少女フィギュアで埋め尽くされていた。 あれだけたくさん買い揃えるのに一体いくらかかるんだろうな。 そのお金がもし親御さんから出されているのなら……苦労は計り知れない。 ぐるりと一通り、見ていて眩暈がした。 僕には理解不能なこの部屋は、ある意味完成されている。 ここはきっと黒十字様の世界そのものなのだろう。 その世界の中心、唯一床が見えるのはパソコン前の小さな一角のみ。 おそらく黒十字様は一日の大半をここで過ごしているんじゃないだろうか……?
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