第十四章 霊媒師 ジャッキー

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それで……肝心の黒十字様はどこにいるのだろう? 部屋を見渡すも誰もいない。 声は聞こえたんだけどなぁ。 まさか依頼者は幽霊でした……とか、そんなオチじゃないよねぇ? ちょっと声を掛けてみようか。 「株式会社おくりびから参りました岡村でございます。黒十字様は今どちらにいらっしゃいますか?」 すぐ後ろでは水渦(みうず)さんが汚い物でも()けるように、床のゴミを蹴っていた。 や、あの、気持ち分かりますが、一応ココお客様の部屋だし、ゴミに見えて大事な物かもしれないし、ねぇ、だからちょっと!  そんなにガシガシ蹴らないでくださいって! (……こもれびか? 来てくれたのか?) 僕の問いかけに数拍遅れて、黒十字様と思われる小さな声が聞こえてきた。 方向的には……あそこか? あたりをつけて目をやれば、そこには閉ざされたクローゼットがあった。 ジャッキーさんと水渦(みうず)さんの3人で顔を見合わせ、当然ながら一番下っ端の僕が行く事となった。 避け切れないゴミを踏みつつクローゼット前に立った僕は、黒十字様を驚かせないよう小さくノックする。 コンコン 「黒十字様はこちらですか? 失礼します、」 返事を待たずにそっと扉を開ける……と、そこには、荷物ともゴミとも見分けがつかないモノに紛れた小柄な男性が膝を抱えて座り込んでいた。 「黒十字様……でいらっしゃいますか?」 立ったままだと目線が高い、僕はその場にしゃがみ(尻になにか当たったが)、震える男性に声を掛けた。 「ほ、ほ、ほ、本当に、こ、こ、こもれびなのか……?」 おくりびです、と訂正するのも躊躇われるほど怯えた顔を上げたのは、やはり黒十字様だった。 もはや電話の勢いがウソのように縮こまり、中が暗いせいもあるかもしれないが、窪んだ目のまわりは真っ黒で、頬もげっそりとこけていた。 これは……相当消耗しているな。 とにかく……まずは安心させてあげないと。 「黒十字様、大変お待たせいたしました」 動揺が表に出ないように、かといって機械的にならないように気を付けながら僕は丁寧にお辞儀をした。 「こもれび! 待ってた! 俺、すっごい待ってた!」 余程怖かったのだろう、黒十字様は家の中に入った事も、ましてや自室に入った事も咎める事なく僕達を歓迎してくれている。
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