第十四章 霊媒師 ジャッキー

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「ヒィィッ! 怖いッ! 怖いッ……あれ……? 岡村さん……?」 僕の腕の中で黒十字様が戸惑っていた。 彼の位置から僕の顔は見えないはずだ。 今のうちにビビり顔から平常顔に戻さなくては。 「岡村さん……あんた、もしかして幽霊から俺を庇ってくれたのか?」 ふふふふ……黒十字様、よくぞ誤解してくれました、計画通り……! 少々浮かれ気味の僕は、色々言うとボロが出そうなので「はい」とだけ答える。 「あ……あの……俺……その、悪かったな。てっきり、その、岡村さんが悲鳴を上げたのは幽霊にビビったんだと思って……」 その通りです。 「だけど……こうして庇ってくれた。さっきのは本当に共鳴だったんだな……!」 や、その、ごめんなさい。 共鳴はウソです。 「結果的にディニエルも守ってくれた、岡村さん、ありがとう」 そう言って、黒十字様はそっと腕を開いた。 「岡村さんには特別に紹介するよ。俺の婚約者、ディニエルだ。俺、一人っ子で甘えん坊な一面もあるから女は年上が合ってるんだよ。ディニエルはこう見えて140才なんだ。すごいだろう? エルフは年を取らないからな」 僕も一人っ子だけど甘えん坊ではない。 黒十字様の発言に正直ナニ言ってんだ?  と思ったけど顔には出さず、差し出された婚約者、ディニエルさんに視線を向けた。 ん……そうきたか。 小柄な黒十字様の腕に抱かれた彼女……それは精巧な造りをした女性型フィギュアだった。 すぐに言葉を発さない僕に、黒十字様は小さな声で言った。 「岡村さんも、やっぱり笑うのか?」 「いえ……」 「母親は俺とディニエルの結婚に反対してるんだ。『人形と結婚なんて出来るはずがない』ってさ。でもな、ディニエルはただの人形じゃない。信じられないかもしれないが、ディニエルはちゃんと生きてる。身体の造りが俺らと違うだけで、普通に動けるし、普通に喋る……ってなんか言えよ! どうせあんたも信じてないんだろう!」 一気に温度が上昇する黒十字様。 フィギュアが動く? 僕らがそれを信じない訳ないじゃないか。 というか……最近そういうの流行ってるの? 「誤解なさらないでください。私共、決して黒十字様を疑ってなどおりません。 その証拠に……と、その前に先程途中だった弊社スタッフの紹介をさせて頂きます。本日、黒十字様ご依頼のポルターガイスト現象鎮静化チームリーダー、志村でございます」 黒十字様の肩に手を添え、視線を部屋の中央に誘導した、そのタイミングで、 『アイヤー!!』 重なるゴミの山から気合と共に高く飛ぶのは、全長40cmの我らがリーダー。 や、ちょ、ジャッキーさん、普通に出てきてくれたらいいのに、ド派手な登場が好きなんだから、もー。 「えっ!?」 そんなジャッキーさんの姿を捉えた黒十字様は、ディニエルさんを抱き締めたまま、クローゼットから身を乗り出した。
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