第十四章 霊媒師 ジャッキー

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ブルーライトに照らされた黒十字様は、まるでUMAでも発見したかのような表情(かお)だった。 「あんた誰だ……!」 とジャッキーさんに問う。 だからさっき紹介したじゃないですか。 彼は志村さん、黒十字様の担当チームのリーダーですってば。 『(はく)よ……本当に力が欲しいのか、』 ジャッキーさんはまだ低音ボイスを崩さないばかりか、芝居がかった話し方に拍車がかかる……って、まだ続くんだ。 「力……本当にそんな事ができるのか……? だけど……もし本当なら……力が欲しい! 得た力でディニエルを幸せにしたい!」 黒十字様の腕に抱かれるディニエルさんは、“動くし、喋る”との事だったが、いまだクタッとして動く気配はない。 それでも黒十字様の目は本気だった。 本気でディニエルさんを幸せにしたいのだろう。 『そうか、愛する女の為に強くなりたいのだな……? わかった。力はくれてやってもいい……』 ジャッキーさんの言葉に、黒十字様の顔がパッと輝いた。 だが、 『が、今の(はく)では力を与えたとしても自分のモノにする器がない。小さなコップに大量のマグマを注いでも、たちまち砕け散り跡形もなくなるだろう。(はく)よ……お前は弱い、己を省みてみろ。今のだらしのない生活をどう説明する?』 この厳しい言葉に黒十字様は言葉を詰まらせた。 なにこの流れ? ポ現まったく関係無いよね……? いきなり腫れた部分に斬り込んじゃって、僕はもうハラハラで胃がキリキリだ。 力云々が落ち着かせる為の方便ならもう充分だろう。 これ以上痛い所を突っ込んだら、黒十字様は怒りだすのではないだろうか……? 心配していた僕を裏切ったのは意外にも黒十字様だった。 「だ、だらしがない生活なのはわかってる。だけど……今更どうしていいかわからないんだ。ずっと引きこもってるから外に出るのが怖い、人に見られるのだって怖い。死ぬ気で頑張っても近所のコンビニに出るのが精一杯だ。だから……力が欲しい! 勇気が欲しい! あんたが誰だか知らないが、俺、力をモノにするだけの器を持ってみせる! だからッ! 俺に力をッ!」
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