第十四章 霊媒師 ジャッキー

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そう必死に訴える黒十字様は、本来素直な人なのかもしれない。 僕に2人のやり取りの意味はよく分からないが、キッカケはどうあれ正直な心の内を吐き出してくれたんだもの。 クローゼットから身を出した黒十字様は、身体を床に伏せるような体勢で、全長40cmのジャッキーさんに目線を合わせた。 もっと話がしたいという気持ちの表れなのだろう。 その目線をしっかりと受け止めた変わらぬ笑顔のリーダーは、依頼者の鼻先にビシッと指を当てこう聞いた。 『その気持ちに偽りは?』 「ない! なんだってしてみせる!」 そう断言した瞬間、黒十字様の目に力が宿った。 だがこの後、その力は減衰の一途を辿る事となる。 『よく言った。(はく)よ、まずは器の強化だ。それには____早寝早起き、』 「え?」 『野菜多めで腹八分、』 「え? え?」 『部屋を片付け掃除洗濯、適度な運動、週2回からのアルバイト、』 「……! バ、バイトはちょっと……まだ怖い……!」 『気持ちは分かるよ、今の(はく)には苦行でしかないだろうから。だけどね、この苦行に耐えきる事ができなければ力は手に入らない。夜更かし禁止、ネットは1日1時間』 「1時間!? 無理だ! せめて3時間!」 『ダメだ、1時間でも長いくらいだ』 「そんな……! ネット限定で新しいアニメが始まったばかりなんだ! 1時間じゃとても巡回しきれない!」 『じゃあ、あげない』 「や! ちょっと! 待って!」 『なんでもするんじゃなかったの?』 「……する……します……けど……できれば最初はリハビリから……」 『これでもリハビリメニューなんだけどなぁ』 「……いや、俺には充分ハードモードっしょ」 『言っておくが、今回モードはイージー設定だ』 「これでイージー……? ウソだろ……? 御慈悲プリーズ……」 この時、黒十字様に宿った力は限りなくゼロに近かった。
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