第十四章 霊媒師 ジャッキー

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「はい!」 リーダーのGOサイン。 手の中は赤い宇宙さながらだった。 中心に赤黒い核があり、明度の異なる赤い線が幾重にも重なって左回りに渦を巻く。 手のひらに接する外側はバチバチと火花が散って、膨大なエネルギーの解放を願っているように視えた。 僕は最後の仕上げにと、丸めた両五指すべて更なる電気を流し込む。 途端、尋常じゃない抵抗を感じた。 湾曲した両手が、荒ぶる小宇宙に弾かれそうになる、が、ダメだ……! 今、この手を崩す訳にはいかない……! 左と右、向かい合う両五指すべてを接触させなければ、ここまで溜めた意味がない。 今の僕は電気の塊。 身体は絶縁被膜を剥された銅線みたいなものだ。 電気の通った剥き出しの銅線同士を接触させれば、当然ショートを起こし大きな電流が一気に流れだす。 今回、目的の為にあえてショートさせたいというのに……これじゃあ……! 『エイミーさん頑張って! 両手が離れてきてる! もっと力を入れて! 指を接触させるんだ!』 わかってます……! わかってるんだけど……腕が痺れて力が入らないんです……! 電気の塊が予想以上に大きくなっちゃって……接触以前に支えてられなく……なってきた……! まずい……! 本気でまずいぞ……! 本来の目的も果たせず、力負けで電気の塊を解放してしまったら……一体……どうなってしまうんだろう……? 「“放電しかできない期待の新人”だけあって、電気(エネルギー)だけは大したものです。ですが、」 視線は漫画本に落としたまま、淡々と水渦(みうず)さんが話しだした。 「コップにマグマを注いでも____という志村さんの言葉ではないですが、強い霊力(ちから)を持っていても、それを扱うだけの器量がなければ宝の持ち腐れです。岡村さん、器量が無いなら霊力(ちから)を加減してください。支えきれなくなっては意味がありません」 僕が何をしているのか分からない黒十字様はポカンとしているものの、水渦(みうず)さんに「次は4巻ください」とお願いされて、嬉々として漫画を用意しはじめた。 続巻を手渡され、嬉しいのか顔を歪めた先輩霊媒師はこう続けた。 「支えるのが難しいのなら、一度解放してやり直せばどうですか?」 解放? 確かに支えるのめっちゃ辛いけど、バッチバチに荒ぶってる電気球(コレ)、簡単に開放しちゃって問題無いのかな……? 「大丈夫ですよ。解放したところで私達に害はありません。そのくらいの大きさだと……せいぜいこの辺り一帯、大規模停電になるくらいでしょうから」
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