第十四章 霊媒師 ジャッキー

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「大規模停電……って、問題アリアリじゃないですかーーーーーッ! よく考えてくださいよ! 停電して影響出るの一般住宅だけじゃないからね? 病院とか電車とかシャレにならないからね? ハイ出たーッ! 久しぶりに出たよーッ! 自分さえ良ければどうでもいい理論!」 両手プルップル、出っ尻体勢で足ガクッガクに震わせながら、役に立たないアドバイスに噛みついた僕に水渦(みうず)さんは、 「この案はお気に召しませんでしたか。では解放しない方向で頑張ってください。それで、岡村さんの作業が終わったら声を掛けてください。それまで漫画の続きをを読んでいますから」 とだけ言って、再び目線を落とした。 オイ、ウソだろ!? フツーこの状況で後輩を放置するか!? 「ちょっ水渦(みうず)さん! 漫画読んでないで助けてください! 僕そろそろ本気で限界なんです! 大規模停電になって電車が止まったら賠償金がヤバイです! その時は水渦(みうず)さん、半額払ってもらいますからねーッ!」 言いがかりに近いような遠いような僕の訴えに「はぁっ」と大きな溜息をひとつつくと、水渦(みうず)さんは渋々漫画本を置いた。 「停電になった所で黙っていれば、私達が原因だなんて誰も思わないですよ。仮に正直に話しても信じてもらえないでしょうし。ですが、いいでしょう。今日の私は機嫌が良いので助けてあげます」 「是非!!」 立ち上がった水渦(みうず)さんは、シュバババババっと高速で印を結び始めた。 えっ!? こんな時にまさかの霊視(のぞき)!?(誰を?) 散乱するゴミと漫画を避けながら、水渦(みうず)さんは僕の近くにやってきた。 性格に多少の難はあるものの、霊力(スキル)の高い先輩霊媒師が来てくれた事で、半瞬、気持ちに緩みが生じた。 その緩みは簡単に僕の身体をブレさせた。 ギリギリの状態。 なんとか支えていた左右の腕がガクンとずれて、手の中の球体が楕円に歪みバウンドを繰り返す。 「……ッ!!」 まずい……!  もう無理……! 支えられない……! 大規模停電……! 電車止まっちゃう……! 賠償金……! きっと見た事もないような高額の請求書が来るに違いない。 もうダメ終わった……と諦めかけた時、落とした肩に温かい手が乗せられた。
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