第十四章 霊媒師 ジャッキー

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「結んでいたのは“増幅の印”です。これで今から30分、私の霊力(ちから)は通常の3倍です。この霊力(ちから)をそのまま岡村さんに流します」 通常の3倍……どこかの赤い彗星みたいなアノ印だ……! スゴイッ! 人の恋路を霊視した(のぞいた)あの日と同じだ! 肩に置かれた水渦(みうず)さんの手がめっちゃ熱いよ! ものすごい霊力(ちから)が流れ込んでくるのがわかる! 僕は水渦(みうず)さんからもらった霊力(ちから)で、がぜん元気を取り戻した。 今なら社長にだって勝てる気が……いや、それは無理か。 ともかく、手の中で暴れる電気の塊を、もっと強い霊力(ちから)で押さえつけた。 そして銅線と同等な僕の左右の両五指を難なく近づけ、 「水渦(みうず)さん、ありがとうございます! ジャッキーさん、お待たせしました! これからショートさせますね!」 と声を張った。 『いやぁ良かった……ちょっとハラハラしたよ』 固定された笑顔からは程遠い、疲労を含んだ声色に「僕の霊力(ちから)不足です」と答えるも、 『いや……逆だよ、放電量が桁違いだからさぁ。だけどチームプレイで乗り切ったね。じゃあ、今度こそいってみようか。バチンとショートさせちゃって!』 と親指を立てた。 「はい!」 湾曲させた手のひらの広げた両五指、左右ゆっくりと近づけていく。 指先が接触すれば、莫大なエネルギーが激しく流れ、手の中の電気球に直撃する____チャンスはその一瞬だ。 手の中の電気球はいわば僕の霊力そのもの。 だが今は、シンプルに丸めただけのただの球体だ。 これを役立つツールに変化させる……そう、社長の思業式神のように、水渦(みうず)さんの蒼い矢のように。 これから隠れた霊を捕まえる為に、僕の霊力を具現化させるのだ。 捕獲のイメージを頭の中で繰り返し、それをショートのタイミングで流し込めば、ただの球体はツールへと進化するとリーダーから教わった。 とは言え……これまで誰かを捕まえよう、追い込もう、などと考えた事もない僕に具体的なイメージは難しい。 ただただ捕獲したいという思いだけを募らせた。 このイメージがどう形を変えるのか、形を変えた電気球がどう動いてくれるのか、初めての事でまったく予想がつかないが、その答えはもうすぐ出ようとしていた。
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