第十四章 霊媒師 ジャッキー

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絶対に核を離さない! 持っているのが難しいならこうだ! 僕はその場にしゃがみ込むと、開いた両足の真ん中に、核を乗せた手ごと床に着け置いた。 お、重い……! たとえるなら床に置いた手のひらに、100kgの重りを乗せられた感覚だ。 接地した手の甲と、その奥の骨がひどく軋む。 だがそれでも、核を持ったまま手を浮かしているより遥かに楽だし、潰されそうな苦痛と引き換えに核を落とす心配はなくなった。 安堵の溜息が漏れる……が、これでもう身動きは取れない。 この後の幽霊達の尋問は、水渦(みうず)さんとジャッキーさんにまかせるしかない。 『へぇ……なんだか知らないが、そんなに赤い玉っころが大事なのか、』 突如、上から降ってきた野太い声。 顔を上げれば40代幽霊がニヤケた顔で僕を見降ろしていた。 『随分重そうな玉っころだなぁ? 手が床にめり込んでるぜ? そこまでして持たなくちゃならない理由(わけ)があるのか? 玉っころから手を離すと霊媒師サマに都合の悪い事があったりして。例えば……幽霊達(おれら)を縛る鎖が切れたりとか、』   クソッ! いい勘してるよ! 僕が黙っていると、両腕を拘束された40代幽霊は、探るように僕の横っ腹を足で突いた。 痛くはないが、しゃがんだ体勢では簡単にバランスを崩してしまう。 僕は転ばないよう腰に力を入れて踏ん張った。 こんな事で落としてたまるか。 『あれ……? あんたも死人なのか?』 自分の蹴りが僕の身体を揺らした事に、40代幽霊はしきりに首を傾げていた。 僕は他の霊媒師には出来ない霊体への物理干渉ができる。 霊的にド素人だった僕が霊媒師としてスカウトされたのも、主にこの霊力(ちから)を買われたからだと言って過言ではない。 だが逆も然りなのだ。 霊体へ物理干渉ができるという事は、霊から僕への物理干渉も可能になる。
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