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ジュッ!
ジュッジュッ!
焼けるような鈍い音が3度聞こえ、その半拍後『ギャッ!』という太い悲鳴が響いた。
悲鳴の主は40代幽霊。
彼は蹴るはずだった僕を放置して、激しく床を転げまわっていた。
『痛えーーーーー!! 足がぁ!! 俺の足がぁ!! 痛えよーーーーー!!』
なんの事だとよく視れば、ストーンウォッシュの両太ももと右のふくらはぎに蒼い矢が突き刺さっている。
傷口から広がる赤い染みが痛々しいものの、火花を散らす電気矢はまるで花火のようにキレイだった。
状況が違えば、40代幽霊も電気花火に目を細めたのかもしれない。
が、彼は今、それどころではなかった。
拘束された腕では、足に刺さった矢を抜く事もできず、打ち上げられた魚のように身を跳ねては顔をグチャグチャにさせていた。
そんな40代幽霊を冷たく見下ろすのは水渦さんだ。
足を突き刺す蒼い矢……あれは彼女が撃ったもので間違いないだろう。
それを裏付けるように、指に絡む蒼い電気が脈打つように瞬いていた。
覚悟を決めたとはいえ、できれば痛いコトはされたくないもの。
蹴りを阻止してくれた水渦さんには感謝しかない。
しかしまぁ、僕を助ける為とはいえ、足を撃つなんてやりすぎだよ。
だけど……以前の水渦さんなら、この程度では済まなかっただろうな。
おそらく足だけを撃つなんて、生ぬるい事はしなかったはずだ。
故意に苦痛を与え苦しめた挙句、跡形もなく滅した事だろう。
だけど今回そうはしなかった。
彼女はちゃんと覚えているんだ。
____軽々しく霊を滅さない、
あの約束を守ってくれてるのかと思うと……なんだろう、すごく嬉しい。
で、問題は40代幽霊だ。
すごく痛がってるし、そろそろ抜いてあげた方がいいのでは……と思った矢先、野太い怒声が上がった。
『そこの女ァ! おまえも霊媒師かぁッ! このクソが! こんなモン撃ちやがって痛えだろうがぁッ! 早く取れ! 聞いてんのかッ! シカトしてんじゃねぇよ、オマエだよ、このブス女ァ!!』
自分は人の顔を蹴ろうとしたくせに……!
水渦さんが矢を撃ったのは僕を助ける為だ……!
ただの暴力じゃない……!
なのに……コイツ……ッ!
「おい、今の取り消せ! 水渦さんはブスじゃない!」
この時、自分でもびっくりするような大声を上げていた。
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