第十四章 霊媒師 ジャッキー

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◆ 雛壇の最前列。 正座するピンクバンダー氏が控えめに語り出した。 『吾輩、世で言うオタクというヤツでして』 うん、知ってた。 視たまんまだし。 ポ現容疑者24名、個々に強弱はあれど、ムーンラビット氏をはじめ方向性は皆同じだ。 黒十字様もアニメやゲームが好きだと言っていたが、共通点はやはりココか? 『ムーンラビット氏の言う通り、最初にこの部屋を見付けたのは我輩です。忘れもしない去年のクリスマス。この近所にある神社でイベントがあって、そこにいた(はく)の後を付けたのが始まりでした』 神社でイベント? なんの? 頭にハテナマークを浮かべる僕と水渦(みうず)さんに、ジャッキーさんが補足説明をしてくれた。 『前にね、神奈川県S市に実在する神社を舞台にした深夜アニメが放送されていたんだ。現代から戦国時代にタイムスリップした女子高生が何度も死にかける人気作でね、』 「死にかける人気作……? よくわからないけどアレですか? 現代人且つ現役女子高生だからこその強み、歴史の知識を生かして大活躍する戦国バトルストーリーとか?」 『いや、それが違うんだよ。主人公の女子高生は勉強が大嫌い。全教科赤点だから当然歴史もわからない。身体能力が優れてるでもない、知識もない、そんな丸腰女子高生が戦に巻き込まれて毎回死にそうになるだけのファンタジーなの』 「そ、そのアニメ本当に面白いんですか……?」 『面白かったよ。その女子高生が戦国時代(むこう)で寝泊まりしてるのが、S市の神社という設定だから聖地化してね。去年のクリスマスイベントは、残念ながら仕事で行けなかったけど、ネットで視たし、当然グッズもポチったよ!』 熱の入った補足説明に僕と水渦(みうず)さんが「へぇ」としか言えない中、ジャッキーさんを視るピンクバンダー氏と雛壇幽霊達の目が明らかに変わった。 『もしかして……そこの霊媒師さんは、その、イケる口(・・・・)なのか? 視た目も……他の霊媒師とは一味違うし』 探るような質問を投げたのはピンクバンダー氏だ。 ジャッキーさんのビジュアルは一味どころの違いじゃないけど、さっきの補足説明に同じ匂いを感じたのだろう。 ジャッキーさんもアニメ、ラノベ、ゲームが好きだって言ってたもんな。 そんなジャッキーさんは、雛壇幽霊達にこう答えた。 『あのアニメはワンクールじゃ物足りないよね。視聴率も好調だったし、グッズの売り上げも上々、聖地イベントだって大盛況。自分はね、二期が始まるのも時間の問題だと思ってるよ。それとピンクバンダー氏、先程の質問の答えは“肯定“だ』 おぉッ!! 雛壇幽霊達から(ついでにクローゼットからも)歓声が上がった。 あっという間に幽霊達に囲まれたジャッキーさんはアニメ話に花を咲かせまくっていた。
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