第十四章 霊媒師 ジャッキー

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『自分がもし、あのアニメの二次を書くなら、どうにかして戦国時代から、タイムスリップ前のレキナ(主人公の女子高生)に「死にたくなければ歴史の勉強してくれ」とメッセージを送らせるね。それを受けたタイムスリップ前のレキナは最初は気味悪がって信じない。だが何度も何度も来るメッセージに、少しずつ心動かされ勉強を始めるの。現代のレキナが得た歴史の知識が、戦国時代のレキナに反映される事で死のピンチを切り抜けていく、』 拳を握り力説するジャッキーさんの話は、鼻息の荒いピンクバンダー氏によって遮られた。 『ジャッキー氏! それはいけませんぞ!(ドンッ!)あれはタイムスリップしたレキナに、歴史の知識というチート能力が無い事が売りになっているのですから!(ドドンッ!)』 熱い反論には更に熱い反論が返される。 『もちろんそれは理解してるよ!(ドンッ!) だけどね、第二話で10度目に死にかけたレキナの、「もっと真面目に歴史の授業受けとけば……ガハッ(吐血)」このセリフが忘れられないんだ……(ドンッ!)レキナが本気で勉強しておけば良かったと悔いるなら、せめて二次の中だけでも願いを叶えてやりたいじゃないか!(ドドドンッ!)』 そこに別の熱も加わった。 ムーンラビット氏である。 『小生、ジャッキー氏を支持しますぞ! 各話5回は死にかけるレキナに回避ルートがあったって罰はあたりませぬぅぅぅっ!(ダダダダンッ!)』 めっちゃ地団駄踏んで涙目なんですが……ええ? そんなに白熱しちゃうの? 口を挟む余地ゼロな僕はポカンと視ているしかなかった……その時。 雛壇に突如十戒が起きた。 オリジナルの設定には忠実に! のピンクバンダー派と、二次なら回避ルートがあってもいいじゃないか! のジャッキー&ムーンラビット派。 それぞれ分かれた派閥の熱い熱い議論が始まったのだ。 『だから!(ドンッ!)いくら二次でもオリジナルの設定、根本を覆すのはいかがなモノかと!(ドンドンッ!)』 『なにを言う!(ドンッ!)レキナはまだ女子高生ではござらんか!(ドドドドドンッ!)オリジナルではできないコトを可能にする、それが二次の良い所、なのですぞ!(ドンドンドンッ!)』 『そうだそうだ!(ドドドドドドドドドッ!)』 『アイヤー!!(ドコドコドッカーンッ!)』 文字通り“騒がしい幽霊”と化したみなさんの論議が熱い。 対立した意見がぶつかるたびに、興奮した彼らは床を、壁を、机を、棚を叩き、地団駄を踏み、時に奇声を上げている。 ちょ、これって……黒十字邸の怪奇現象って……いやはやなんとも。 「水渦(みうず)さん。僕、真相わかっちゃったんですけど」 脱力を隠せない僕の呟きに、 「私もです」 先輩霊媒師も棒読みで答えてくれた。
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