第十四章 霊媒師 ジャッキー

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黒十字様の部屋で年を越したピンクバンダー氏は、その後も部屋(せいち)に入り浸っていた。 連日、黒十字様の隣で深夜アニメを鑑賞し、フィギュアを愛で、ゲームの謎を解き、声優ライブDVDではトータル2時間、全曲完璧に歌い踊ってイイ汗を掻いた。 楽しい! なんて楽しいんだ! 幽霊になってからというもの、自由気ままにオタクライフをエンジョイしてきたけれど、こんなに楽しいのは初めてなんじゃないだろうか! そう、ピンクバンダー氏は、黒十字邸暮らしを思いっきり満喫していたのである。 そんな彼はある日、ふと思ったのだ。 こんなに楽しい毎日を独り占めとはいかがなものか。 これはオタ仲間と分かち合うべきではないだろうか、と。  そこでピンクバンダー氏は、1番の仲良し幽霊オタクであるムーンラビット氏を黒十字邸に呼んだ。 結果、ムーンラビット氏も「聖地見付けた……!」と入り浸る事となったのだ。 黒十字様だけが知らないまま、奇妙な共同生活が始まって数か月後。 オタ仲間は劇的に増えていき、人数が増えた事で、幽霊達(かれら)の気はだんだん大きくなった。 最終的に、ご母堂(黒十字様のお母様)が、働かない黒十字様にキレて家を出た1か月前。 ちょうどその頃、一期が終わってしばらくたったレキナアニメの待望のOVAが発売された(黒十字様はもちろん購入、流しっぱ)。 それによりレキナ議論で盛り上がりすぎての、ポルターガイスト現象となったのだ。 『(はく)に迷惑かけてしまって申し訳ござらん! 吾輩も……ムーンラビット氏も……しぇんほわ氏も……ロベルタ女史も、魅音氏も、マミッタ女史も、デグさん氏も、エルリック氏も……我ら総勢25人! みんな(はく)の事が大好きなんですぞ! できるならずっとこうしてみんなで暮らしたい……けど、霊媒師まで呼んだって事は……そろそろ解散の時期なのかもしれませんなぁ……』 最後の方はしんみりと声を細めたピンクバンダー氏。 自分達が祓われるとは思っていなかったのだろう。
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