第十四章 霊媒師 ジャッキー

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…… ………… この幽霊(ひと)の出す空気。 口先だけじゃない、本気で悪いと思ってるのだろうな。 昔の話だけど僕は謝罪のプロだった。 本気かどうかは視ればわかる。 ジャッキーさんを同士と認めたがゆえ、その身内の僕への乱暴を悔いているんだ。 強い仲間意識……だけどその仲間の前で土下座するのは、相当勇気がいただろうに。 「顔を上げてくだい。僕、もう怒ってないですよ。それにほら、こっちだってピンクバンダー氏を矢で撃っちゃったんだし、お互い様ですよ」 ピンクバンダー氏が顔を蹴ろうとした直前。 僕を助ける為に、水渦(みうず)さんは矢を3本も撃ち込んだ。 結果、僕は無傷だけど彼は負傷した。 『……許してくれるんですか……? 俺、ひどい事したのに……うぅ、岡村さん優しい……ありがとう、ありがとう……本当にずびばでんでじだぁぁぁ!!』 ドンッ! ガバァッ! ガシィッ! え!? 人は驚きすぎると思考が停止する。 自分の身に起きた事を理解するのに数秒を要する事もある。 今僕の目の前の至近距離、そこには脂でギトギトの頭頂部と、その長い髪の間からピンクのバンダナの結び目が視えているのだが、これって……! ああ、もう信じられない! 飛び込んできたんだよ! 僕の! 貧弱な! この胸に! 信じたくないが、涙と鼻水と頭皮の脂でテカテカギトギトの中年幽霊が今、僕に抱きついて号泣中なのだ!! しかも! 時折上目遣いでチラチラ視てるし! 今回の現場、1番の恐怖体験はコレに決定だねッ! 「ヒィィィィィィ!! ヤメテェェェ!!」 僕は幽体に干渉する霊力(ちから)を持っている、が。 今日ほどこの霊力(ちから)を呪わしく思った事はなかった。 お願い! 今すぐ離れて! 大福以外は抱っこしない主義なんです! もうホント許してくださいー! 僕、謝りますからーーーッ!
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