2367人が本棚に入れています
本棚に追加
ギ、ギ、ギ……ギ、ギ、ギ……
ドアはドミノのように崩れる漫画本がジャマして開かないようだ。
てか、あの漫画本って水渦さんが読んでいたヤツじゃないの?
んもー仕方ないなぁ。
「ジャッキーさん、水渦さん、なんかドア開けられなくて困っているみたいだから、僕ちょっと行ってきます。あの向こうにいるのって25人目の幽霊っぽくないですか? てか探すの大変だからそうであってほしい」
手抜きな本音を漏らした僕がお叱りを受けなかったのは、9割強、先輩方も同じ気持ちなのだと思う。
その証拠にジャッキーさんは『どうかビンゴでありますように!』と手をゴシゴシと擦り合わせていた。
雪崩を起こした漫画本を、部屋の端に寄せる。
障害物がなくなればあとは容易い。
半開きのドアに手を掛けゆっくりと手前に引いた。
ギーーッ、
『はわっ!(コテン!)』
声を掛けずに開けたのが悪かった。
一生懸命開かないドアを押していたのだろう、その支えを失った小さな女の子が、前のめりに転がってきた。
「わっ! ゴメン!」
慌てて女の子を抱き起こすと、差し入れた脇の下が氷のように冷たい。
やはりこの子は幽霊のようだ、果たして25人目の子だろうか?
軽い霊体をふわりと浮かせ、しっかり床に立たせてやる。
僕はこの時初めて女の子の全体を視たのだが、
「…………ッ!」
本当にギリギリだった。
腹の奥から昇る悲鳴は、喉を通過し閉ざした口内でなんとか押し殺す事ができた。
『起こしてくれてアリガトなのです! それとドアを開けてくれたのもお兄さんでしょ? いっぱいいっぱいアリガトなのですぅ!』
かわいらしい萌え声でぴょんぴょん跳ねる女の子は、茶色のクセ毛が柔らかそうに揺れていた。
クリクリとした大きな目、指でつまみたくなるような小さな鼻、グミのようなプルプルの唇が丸い輪郭に幼く配置され、『アリガトなのですぅ』と笑う顔が人懐こい。
なにかの発表会で着るような、ピンクのワンピースはフリルとレースがお姫様のようで、幽霊達が【お嬢】と呼ぶのも頷ける。
最初のコメントを投稿しよう!