第十四章 霊媒師 ジャッキー

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ギ、ギ、ギ……ギ、ギ、ギ…… ドアはドミノのように崩れる漫画本がジャマして開かないようだ。 てか、あの漫画本って水渦(みうず)さんが読んでいたヤツじゃないの? んもー仕方ないなぁ。 「ジャッキーさん、水渦(みうず)さん、なんかドア開けられなくて困っているみたいだから、僕ちょっと行ってきます。あの向こうにいるのって25人目の幽霊っぽくないですか? てか探すの大変だからそうであってほしい」 手抜きな本音を漏らした僕がお叱りを受けなかったのは、9割強、先輩方も同じ気持ちなのだと思う。 その証拠にジャッキーさんは『どうかビンゴでありますように!』と手をゴシゴシと擦り合わせていた。 雪崩を起こした漫画本を、部屋の端に寄せる。 障害物がなくなればあとは容易い。 半開きのドアに手を掛けゆっくりと手前に引いた。 ギーーッ、 『はわっ!(コテン!)』 声を掛けずに開けたのが悪かった。 一生懸命開かないドアを押していたのだろう、その支えを失った小さな女の子が、前のめりに転がってきた。 「わっ! ゴメン!」 慌てて女の子を抱き起こすと、差し入れた脇の下が氷のように冷たい。 やはりこの子は幽霊のようだ、果たして25人目の子だろうか? 軽い霊体(からだ)をふわりと浮かせ、しっかり床に立たせてやる。 僕はこの時初めて女の子の全体を視たのだが、 「…………ッ!」 本当にギリギリだった。 腹の奥から昇る悲鳴は、喉を通過し閉ざした口内でなんとか押し殺す事ができた。 『起こしてくれてアリガトなのです! それとドアを開けてくれたのもお兄さんでしょ? いっぱいいっぱいアリガトなのですぅ!』 かわいらしい萌え声でぴょんぴょん跳ねる女の子は、茶色のクセ毛が柔らかそうに揺れていた。 クリクリとした大きな目、指でつまみたくなるような小さな鼻、グミのようなプルプルの唇が丸い輪郭に幼く配置され、『アリガトなのですぅ』と笑う顔が人懐こい。 なにかの発表会で着るような、ピンクのワンピースはフリルとレースがお姫様のようで、幽霊達(みんな)が【お嬢】と呼ぶのも頷ける。
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