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「あの! この幽霊なにも悪い事していないので矢で撃ったりとかしないでください! それより視てください、ケガをしてるんです。こんなにひどい火傷と水ぶくれが、」
とっさに水渦さんの前に立ち、女の子を庇った……つもりでいた。
しかしよく視れば、先輩霊媒師の五指に電気のチャージはなく、ただただ呆れた顔を僕とジャッキーさんに向けていた。
「ウチの会社の男どもは馬鹿なのですか?
デリカシーに欠けるのは社長だけで充分です。これだけの火傷を気にしない女の子なんていませんよ。
それを初対面の大人2人にジロジロ視られ、本人置いてきぼりで好き勝手話題にされたら隠したくもなります、恥ずかしくもなります、泣きたくもなります。
私はこの子の気持ちが分かります。容姿については他人があれこれ言うべきではありません。言うなら信頼関係を結んでからです」
溜め息交じりの水渦さんの言葉に、僕もジャッキーさんもハッとした。
もちろん悪気があった訳じゃない、興味本位だった訳でもない、本気で心配した事に間違いない。
だけど気付くべきだった。
女の子が身体を強張らせ座り込んでしまったのは、火傷の足を隠したかったからなんだ。
「先程は____
弊社の男性社員が大変失礼いたしました。お詫び申し上げます。
私は、株式会社おくりびの霊媒師で小野坂水渦と申します。黒十字様のご依頼で、あなた方幽霊を祓いにきました。ですが祓う前にきちんとお話を伺いたいと思っております。失礼ですが、あなたのお名前と年齢をお聞かせ願いますか?」
子供相手でも一切ブレる事なく、ガチガチの仕事口調で接する水渦さんに、女の子はおずおずと顔を上げた。
『……名前?』
「はい、年齢も一緒にお願いします」
『んと……名前は絵里、9才だよ 。お姉さんはミーズさんっていうんだね。あのね……アリガトなのです。絵里、知らないお兄さん達に足のコト言われてチョットびっくりしたけど、ミーズ姉さまが優しくしてくれたから、もうダイジョウブなのです。
それからお兄さん達も、絵里の足を心配してくれてたんだよね? アリガトなのです』
絵里ちゃんは、水渦さんだけじゃなく、僕達にまでお礼を言ってくれた。
生前なにがあったのかは知らないけど、その火傷、僕が必ず治してあげるから。
いやな思いをさせてしまって、本当にごめんね。
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