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『お嬢! ご帰還になられましたか! みんなお嬢がいなくて淋しかったのですぞ!』
ピンクバンダー氏をはじめ、レキナDVDに夢中だった幽霊達が次々に立ち上がった。
『オイ、ガキんちょ遅かったナ! また道に迷ったカ!』
『お嬢の無事をサンタマリアに祈っておりました……』
『犬の散歩は楽しかったでござるか?』
『早くこっちにおいでぇ』
『ブツ……ブツブツブツ……ブツブツ……』
『お嬢がいないとつまりません』
絵里ちゃんを前に、幽霊達の表情は融点に達してデレデレだ。
『お兄さまっ! お姉さまっ! ただいまなのですぅ!』
両手を広げ駆け出す9才児は弾むゴムまりのごとくオタク幽霊達にダイブして、その中心でワシャワシャと頭を撫でられていた。
絵里ちゃんは幽霊達のアイドル的存在なんだなぁ。
なんだかすごく楽しそうだ。
『ジャッキー氏、岡村さん、小野坂様、少々よろしいですかな?』
アイドルの握手会ならぬ、頭ワシャワシャ会にただ1人参加しない幽霊が、僕ら霊媒師に声を掛けてきた。
ピンクバンダー氏である。
……てか、呼び方。
“ジャッキー氏”、“岡村さん”、までは分かるけど“小野坂様”って。
『お嬢の足に驚いたようですな、』
輪の中心で手を振る絵里ちゃんに、オタ芸バリのビックリアクションで手を振り返すピンクバンダー氏は、顔はにこやかなまま話の内容を悟られないように続けた。
『吾輩も、お嬢から聞いた少しの情報しか知らんのですが……あれは母親にやられたらしい、ですぞ。しかもその傷が原因で命を失ったのです……グズッ……酷い話だ……』
母親にやられた……?
その言い方は、不慮の事故でああなったとは考えにくい。
まさか……故意的に……?
それって虐待なんじゃないのか……?
『よくある話です。若い母親と内縁の夫。お嬢は虐待されていたのです。その日常的な暴力がエスカレートしたのでしょう。最後は……風呂場で……』
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