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____絵里、お風呂で死んじゃったのです、
____夜ね、みんな寝てた時にね、
____オジサンに「2人だけでお風呂に入ろう」って起こされたの、
____ホントは嫌だったけど、言うコト聞かないと叩かれるから……
____お風呂はキライなのです、
____オジサンは絵里をジロジロ見て写真を撮るのです、
____すごく嫌だったのです……それに、
____お母さんに見つかると怒られるのです、
____このバイタ! って怒られるのです、
____いっぱいいっぱい怒られるのです、
『夜中に目を覚ました母親は、風呂場にいたお嬢と男を見つけてヒステリーを起こしたそうです。それで……男は逃げ出し、裸のまま残されたお嬢は……嫉妬に狂った母親に、さんざん殴られ突き飛ばされて、挙句温度をマックスまで熱くしたシャワーを長いこと掛けられて全身に火傷を……その後、病院にも連れてってもらえず一晩放置されて、そのまま……』
幽霊達に囲まれ、キャッキャと笑う絵里ちゃんからは想像すらつかない。
あんなに可愛くて優しい子が、そんな惨い最期を迎えていたなんて……ひどすぎる。
『その話を聞いた時、我らオタクチームみんなで母親を呪いに行こうと一致団結したのであります。だけど……お嬢は泣きながらそれを止めました。「お母さんにヒドイコトしちゃだめなのです」って。ヒドイ事されたのはお嬢の方なのに……母親ってだけで純粋に愛しているのです……うぅ……我らは無力なのであります……!』
ピンクバンダー氏は鼻を啜り横を向くと、悔しそうに壁を叩いた。
その音に驚いた黒十字様は、ヘッドホンをひっ掴んで耳にあてると、頭から毛布をかぶりなおし震えている。
ああ、また依頼者を怯えさせてしまったな。
だけど僕達は、涙ぐんで歯を食い縛る目の前の幽霊を、今回ばかりは責める事ができなかった。
「1つ質問よろしいでしょうか?」
感情の読めない能面顔の水渦さんが軽く手をあげた。
『小野坂様!! なんなりと!! このピンクバンダー、貴女のしもべでございます!!』
よっぽど矢で撃たれたのが効いちゃったんだなぁ。
もう清々しいほどの低姿勢だよ。
「絵里さんはいつからこの部屋に? 彼女もピンクバンダーさんが呼んだのでしょうか?」
『いえッ、違うであります! お嬢は吾輩が来るより前からこの部屋にいたのであります! 具体的にいつからいたのかは……それがハッキリしないのであります。お嬢の記憶が曖昧で……
参考までに2人の接点ですが、お嬢が生きていた頃、1度だけ白と話す機会があったそうです。実はお嬢の住んでいたアパートがこの家の近所で、公園で1人で遊んでいた時に、通りかかった白から食玩オモチャのダブリを貰ったと、それがすごく嬉しかったと言ってました』
背筋を伸ばし、なぜか敬礼までしたピンクバンダー氏がキビキビと答える。
水渦さんは、少し考えてからさらに質問を続けた。
「そうですか、ではもう1つ。絵里さんは最初から足に火傷を?
特別な理由が無い限り……通常、生前の怪我や病気は死後に引き継がれる事はありません。霊体になると同時に全ての苦痛から解放されます。もちろん火傷のような傷跡も同様です。ですが絵里さんの足には火傷の傷があります。理由がなければこのようなイレギュラーは起こらないはずなのですが」
そう言えば……前にユリちゃんのお爺さんが、そんなような事を言っていた。
死ぬと身体の不調がなくなるって。
じゃあどうして絵里ちゃんの足には火傷の傷が残っているのだろう?
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