第十四章 霊媒師 ジャッキー

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うわぁ……めっちゃ嬉しそうに笑ってるよ。 デュフフフって……大福が戻ってきたら言ってみようかなぁ……いや、やっぱりやめておこう。 『お嬢の足に火傷の傷が現れたのは、(はく)の嫁に入り込むようになってからです』 「黒十字様の嫁……? それはもしかして、」 『そうです。エルフのフィギュア、ディニエルの事です。お嬢はディニエルに入り込んで、動かしたり話す事ができるのです。幽霊の我らの声は(はく)には聞こえないがディニエルを通せば届くのであります』 黒十字様の前世からの運命の女性(ひと)か……! 待って、それじゃあ、あのフィギュアの中の人は絵里ちゃんだったって事!? 『お嬢は(はく)が大好きなのであります。それは……悔しいかな、我らを好きというのとは別の意味なのであります。ですが、おそらくアレは恋とも違う。生前、優しくしてくれた(はく)に依存しているのではないかと……いや、本当の所はお嬢にしか分かりませんが。ディニエルは(はく)が1番大事にしているフィギュアです。片時も離しません。お嬢はディニエルの中に入り込んで、(はく)の温もりに安心しているのであります』 「あのッ! 僕も質問いいですか? 絵里ちゃんが黒十字様を好きなのは分かりました。フィギュアを依り代にしている事も。だけど、それと火傷の傷が現れたのとどういう関係があるのでしょう?」 思わず手をあげた僕に答えてくれたのはジャッキーさんだった。 『フィギュアに入り込み、それを動かしたり喋らせたりするだけの霊力(ちから)が、子供の絵里ちゃんには足りないんだと思う。足りてないのに無理して動かすという事は、その不足分をどこからか調達しなければならない。幽霊が持っているエネルギーと言えば1つしかないよね?』 幽霊が持つエネルギー? なんだろう? 幽霊は身体はもちろん服や装飾品に至るまで、すべて電気で造られているんだ。 エネルギーになるモノなんて……ああ、そうだ、自分の霊体以外なにもない(・・・・・・・・・・・・)、 「まさか……、」 『そう、そのまさかだ。絵里ちゃんは自分の身体を構築する電気を削って、フィギュアを動かしているんだろう。本人が知っててやってるのか、それとも分からずにやってるのかは不明だけどね。そのリバウンドで消えたはずの火傷の傷が出てきたんだ。霊体(からだ)の電気を削った分、正しく再構築させれば全体的に縮む程度で収まったのだろうけど、そんな事、素人には……ましてや子供にはできっこないよ』 確かにそれは無理だ。 自分の霊体(からだ)の再構築なんて、先代くらいの手練れでなければ正確になどできない。 現に絵里ちゃんはリバウンドしてしまった。 『ジャ、ジャッキー氏……今の話……このままいくとお嬢はどうなっちゃうんだ? お嬢の火傷は……最初は足首までだったんだ。それが何度もディニエルに入るうちにどんどん広がって、今では腹の所まで火傷になってて……』  真っ青な顔に脂汗を滲ませたピンクバンダー氏の声が震えていた。 クソッ! 絵里ちゃんの火傷は足だけじゃなかったのか。 おなかまで広がっているとなれば、早急になんとかしなくちゃダメだ。    
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