第十四章 霊媒師 ジャッキー

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◆ 『ここで、現状と今後の動きを確認するよ。みんな集まって』 全長40センチのリーダーの号令がかかった。 絵里ちゃんに悟られないよう、霊媒師3人が部屋の隅で顔を近づけると、 『吾輩も参加させてくれ!』 小さな声でコソコソと、祓われる側のピンクバンダー氏も輪に加わった。 部屋の真ん中では、オタク幽霊達の“絵里ちゃんを囲む会”が盛り上がりを見せている。 生前の辛さや悲しみ、そういったものを感じさせない楽しそうな笑い声。 できる事なら、ああやって笑ったまま成仏させてあげたい。 『ピンクバンダー氏の協力が得られるなら心強い、ありがとう。まず早急になんとかしなくちゃいけないのは絵里ちゃんだ、』   切り出したジャッキーさんに、滝汗のピンクバンダー氏が割り込んだ。 『その事なんだが、お嬢はこれからどうなってしまうんだ? 火傷はもう治らないのか? くそっ……! 吾輩がもっとしっかりしていれば……! お嬢がディニエルに入り込むたび、少しずつ火傷が広がっていったんだ、途中から気付いたのに……!』 ピンクバンダー氏にとって、いや、幽霊達(みんな)にとっても絵里ちゃんは、娘のようにかわいくて大事な存在なのだろう。 頭を抱えて取り乱す姿に心が痛む。 とにかく、ピンクバンダー氏の気持ちが落ち着くのを待ってから、当時の話を詳しく聞こうと思っていたのに、 「あなた……気付いていたのに放置したのですか?」 心底不思議そうに眉を潜める水渦(みうず)さんが、傷心のピンクバンダー氏に容赦なく斬り込んだ。 『我輩はっ……! ああ……いや……そうです……結果、放置したのであります……少しずつ、本当に少しずつ火傷が広がって、ふくらはぎの真ん中あたりまできたトコで、やっと気が付いて……お嬢に大丈夫なのかと聞いたのですが……痛くないからと言われ……そのままにしてしまいました……』 ガックリと肩を落し、青ざめた顔を下に向けたまま答える幽霊に、手練れ霊媒師はさらに続けた。 「気付いた段階で憑依を止めるべきでした。今では腹部まで広がっているのでしょう? 火傷が広がる原因が憑依だと薄々解っていたのに、止める幽霊(かた)は誰もいなかったのですか? みなさんは絵里さんを可愛がりはするけれど、彼女を大事にする気は無かったのでしょうか?」 水渦(みうず)さん、そんなに追い詰めるような言い方をしなくても…… ピンクバンダー氏のメンタルは限界に近い。  
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