第六章 霊媒師OJT-2

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『ひっ……! 首を絞められて興奮したとでも言いたいの? 嫌っ! 嫌っ! 嫌っ! 変態! 最低っ! 気持ち悪いっ!』 「ち、違いますっ!!」 だめだ、喋れば喋るほど誤解が深まる。 『とにかく! もう私に話しかけないで! 近づかないで!』 「えっ! ちょっと待ってください! 本当に! ちょ! 話を聞いて!」 『しつこいです! 来ないで!』 そう睨みつけ踵を返した田所さんの肩を掴む僕。 短い悲鳴を上げた彼女は振り向きざまに僕の左頬を打った。 女性の力とは思えない重い張り手に僕は思わず尻もちをつく。 同時、僕の上に田所さんが降ってきた。 まるで僕が押し倒されたような格好に気まずい沈黙。 え!? なんで!?って……ああ、これか。 僕から発せられた電流はまだ田所さんの左胸に赤い花を咲かせている。 繋がれたままの僕らのうち片方が倒れれば、もう片方も引っ張られるように巻き添えを食らう、ただそれだけの事だった。 一方そこに気付いていない田所さんは、僕を組み敷いたまま、『違うの! 違うの!』と狼狽えている。 「わかってます、大丈夫ですよ」 僕は言いながら半身を起こし、田所さんの両腕を掴み僕の隣に座らせた。 羽のような軽さに切なさがこみ上げる。 「あやまらないでください、僕が悪かったんです。わかったような事を言ってあなたを怒らせてしまった。あなたに首を絞められた時、正直言って怖くてたまりませんでした。殺されたくない、生きたいって必死で、でも力でまったく敵わなくて……それで、あんなセクハラまがいな事を言ったんです。突拍子もない事を言えば、びっくりして力を抜いてくれるかなーなんて……えっと……本当にごめんなさい」
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