第十四章 霊媒師 ジャッキー

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『火傷の記憶が甦るという事は、凄惨な体験を二度繰り返すという事だ。それは一度目よりもキツイ。なぜなら辛い状況がデフォルトだと思っていた生者時代とは違うからだ。死者となり部屋(ここ)幽霊達(みんな)の愛情に包まれ、ディニエルに憑依する事で黒十字様と触れ合い、以前に比べ幸せな毎日を送る彼女に二度目は耐えられないだろう。 耐えられなければどうなる?  人はそういう時、自分を、他人を、取り巻く環境のすべてを呪うんだ。一度生まれた呪いは新たな呪いを生む。今と過去を呪いつくし本来の自分を失う。そうなれば幽霊達(みんな)の事はもちろん、自分が何者かも分からなくなる。優しい女の子はただの悪霊となるんだ』 とうとう耐えきれなくなったピンクバンダー氏が床に嘔吐した。 ジャッキーさんは、そんな幽霊(かれ)の背中をさする。 そして、力強くこう言った。 『大丈夫ですよ、ピンクバンダー氏。さっき言ったでしょう? まだ間に合う、と。こういう時の為の霊媒師だ、出来る限りの救済をします。ですが、最終的には幽霊達(みんな)の力が必要になる。その時は協力してくださいね』 その言葉でピンクバンダー氏の目に力が宿った。 幽霊(かれ)は、汚れた口元を手で拭い立ち上がると、 『もちろんであります! お嬢の為なら、無い命も差出ましょうぞ……!』 そう言って右手を高々、天に掲げた。
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