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『あれぇ? にぃにはドコですか? もしかして……キャッ! おトイレでしょうか?』
絵里ちゃんの弾む声がした。
すかさず1人の幽霊がそれに答える。
『ブツブツ……ブツ……ブツブツブツブツ……』
き、聞こえない……!
あの幽霊さっきから声が小さすぎてナニ言ってるのか分からないんだよな。
『フムフムなのです、にぃにはクローゼットに隠れてるのですね♪ わぁい、かくれんぼなのですぅ!』
うそーん、なんで絵里ちゃんには聞こえるんだよ。
って、“にぃに”って……黒十字様のコトだよねぇ?
『それでは、お兄さま、お姉さま、絵里はそろそろ、にぃにの嫁にジョブチェンジするのです!』
ピョンと跳ねた絵里ちゃんが元気にそう言うと、スタスタとクローゼットに向かい歩き始めた。
「「『『 ちょっと待ったーーーっ!!』』」」
さっそくの憑依宣言に、初めてピッタリ息の合った3人の霊媒師+オタク幽霊が、慌ててそれを止めた。
『はわわ! どうしたのですか?』
びっくりして足を止める絵里ちゃんに、僕達男性陣が口ごもる。
なんて言ったら良いのだろう?
絵里ちゃんはまだ9才の女の子だ。
なるべく怖がらせないように、ディニエルさんに憑依するのを止めなくてはならない。
まずはそれからだ。
理由は後からゆっくり話そう。
足止めミッションの一番手はピンクバンダー氏だ。
幽霊はさり気なく絵里ちゃんの前に立ち、黒十字様へのルートを遮断する(ま、一直線なんだけど)。
『あー、その、ほら! 吾輩、まだお嬢とお喋りしてないのであります! 吾輩、お嬢が足りないと死んじゃうのでありますよぉ。デュフフフフ』
もう死んでますよ?
という野暮なツッコミは飲み込んで、ピンクバンダー氏の機転にグッジョブと親指を立てた。
『にゃはは、照れるのですぅ。絵里もお兄さまダイスキなのですよ!』
ズキューーーーーン!!
絵里ちゃんの笑顔に、ピンクバンダー氏が軟体動物と化した。
確かにカワイイ……ま、大福ほどではないけどね。
ほわんとした2人の会話が数分続く。
が、緊張しているのかピンクバンダー氏のトークが立たない。
『お兄さま、絵里はそろそろ嫁になりに行くのです。止めないでほしいのです』
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