第十四章 霊媒師 ジャッキー

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◆ 『あれぇ? にぃにはドコですか? もしかして……キャッ! おトイレでしょうか?』 絵里ちゃんの弾む声がした。 すかさず1人の幽霊がそれに答える。 『ブツブツ……ブツ……ブツブツブツブツ……』 き、聞こえない……! あの幽霊(ひと)さっきから声が小さすぎてナニ言ってるのか分からないんだよな。 『フムフムなのです、にぃにはクローゼットに隠れてるのですね♪ わぁい、かくれんぼなのですぅ!』 うそーん、なんで絵里ちゃんには聞こえるんだよ。 って、“にぃに”って……黒十字様のコトだよねぇ? 『それでは、お兄さま、お姉さま、絵里はそろそろ、にぃにの嫁にジョブチェンジするのです!』 ピョンと跳ねた絵里ちゃんが元気にそう言うと、スタスタとクローゼットに向かい歩き始めた。 「「『『 ちょっと待ったーーーっ!!』』」」 さっそくの憑依宣言に、初めてピッタリ息の合った3人の霊媒師+オタク幽霊が、慌ててそれを止めた。 『はわわ! どうしたのですか?』 びっくりして足を止める絵里ちゃんに、僕達男性陣が口ごもる。 なんて言ったら良いのだろう? 絵里ちゃんはまだ9才の女の子だ。 なるべく怖がらせないように、ディニエルさんに憑依するのを止めなくてはならない。 まずはそれからだ。 理由は後からゆっくり話そう。 足止めミッションの一番手はピンクバンダー氏だ。 幽霊(かれ)はさり気なく絵里ちゃんの前に立ち、黒十字様へのルートを遮断する(ま、一直線なんだけど)。 『あー、その、ほら! 吾輩、まだお嬢とお喋りしてないのであります! 吾輩、お嬢が足りないと死んじゃうのでありますよぉ。デュフフフフ』 もう死んでますよ? という野暮なツッコミは飲み込んで、ピンクバンダー氏の機転にグッジョブと親指を立てた。 『にゃはは、照れるのですぅ。絵里もお兄さまダイスキなのですよ!』 ズキューーーーーン!! 絵里ちゃんの笑顔に、ピンクバンダー氏が軟体動物と化した。 確かにカワイイ……ま、大福ほどではないけどね。 ほわんとした2人の会話が数分続く。 が、緊張しているのかピンクバンダー氏のトークが立たない。 『お兄さま、絵里はそろそろ嫁になりに行くのです。止めないでほしいのです』
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