第十四章 霊媒師 ジャッキー

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「絵里さん、少々よろしいでしょうか?」 相変わらずガチガチの仕事口調の水渦(みうず)さんが絵里ちゃんを止めた。 『ミーズ姉さま! どうされたのですか?』 「端的に申し上げます。絵里さんはもう黒十字様の配偶者にはなれません。今後2度とディニエルに憑依しないででください」 わぁ……ひとつもムダがない。 いきなり直球だよ。 まぁ、水渦(みうず)さんの性格上、らしいといえばらしい。 男3人が散々気を揉んで、遠回しなアプローチをしたというのに。 良くも悪くもこの人は真っ直ぐだ。 嘘がないかわりに、相手の気持ちにはすこぶる疎い。 …… ………… という事はもしかして、この後も直球が続くのか……? 「理由を申しあげます。憑依を繰り返せば、ますます火傷が広がります。その火傷が全身を覆い尽くした時、心身共に強い苦痛に支配される事でしょう。そして、」 ちょっと待って! 絵里ちゃんはまだ子供なんだ! 話すならオブラートに包んであげてくだ、 「絵里さんは自己を失い悪霊化します」 さい……って、遅かった。 『火傷が広がってアクリョウカ……? 悪……霊……? 悪い幽霊ってコトですか? 絵里が……? またまたー、なのです。だって絵里、元気だよ? ちっとも痛くないのです。それに、これは生きていた時からあったケガなのです。にぃにの嫁になるコトとは関係がないのです』 心は不安に揺れるものの、痛みが無い事を強調し平静を装う絵里ちゃんに対し、水渦(みうず)さんは反論を許さない。 「亡くなってすぐの頃は完治されていたでしょう?」 『……ん、そうだけど、でも、』 「絵里さんにはまず、幽霊と病気や怪我について説明しましょう。人は亡くなり幽霊となった時、全ての苦痛から解放されます____」 水渦(みうず)さんの説明を聞き終えた時、絵里ちゃんはもう笑っていなかった。
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