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「絵里さん、少々よろしいでしょうか?」
相変わらずガチガチの仕事口調の水渦さんが絵里ちゃんを止めた。
『ミーズ姉さま! どうされたのですか?』
「端的に申し上げます。絵里さんはもう黒十字様の配偶者にはなれません。今後2度とディニエルに憑依しないででください」
わぁ……ひとつもムダがない。
いきなり直球だよ。
まぁ、水渦さんの性格上、らしいといえばらしい。
男3人が散々気を揉んで、遠回しなアプローチをしたというのに。
良くも悪くもこの人は真っ直ぐだ。
嘘がないかわりに、相手の気持ちにはすこぶる疎い。
……
…………
という事はもしかして、この後も直球が続くのか……?
「理由を申しあげます。憑依を繰り返せば、ますます火傷が広がります。その火傷が全身を覆い尽くした時、心身共に強い苦痛に支配される事でしょう。そして、」
ちょっと待って!
絵里ちゃんはまだ子供なんだ!
話すならオブラートに包んであげてくだ、
「絵里さんは自己を失い悪霊化します」
さい……って、遅かった。
『火傷が広がってアクリョウカ……? 悪……霊……? 悪い幽霊ってコトですか? 絵里が……? またまたー、なのです。だって絵里、元気だよ? ちっとも痛くないのです。それに、これは生きていた時からあったケガなのです。にぃにの嫁になるコトとは関係がないのです』
心は不安に揺れるものの、痛みが無い事を強調し平静を装う絵里ちゃんに対し、水渦さんは反論を許さない。
「亡くなってすぐの頃は完治されていたでしょう?」
『……ん、そうだけど、でも、』
「絵里さんにはまず、幽霊と病気や怪我について説明しましょう。人は亡くなり幽霊となった時、全ての苦痛から解放されます____」
水渦さんの説明を聞き終えた時、絵里ちゃんはもう笑っていなかった。
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