第十四章 霊媒師 ジャッキー

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◆ 最初は霊媒師3人とピンクバンダー氏だけだった円陣が、人数が増えた分だけ大きく広がった。 絵里ちゃんを悪霊化させない為に、他の幽霊達(みんな)にも事情を話したのだ。 『そんな……信じられませんぞ……!』 『だが霊媒師殿の言う通りでござる。お嬢の火傷は前より広がったのでござるよ』 『可哀そうなガキんちょネ。おい霊媒師、火傷を私に移すコトできないカ?』 『サンタマリアの名において……なんとしてもお助けいたします』 『もう絶対に憑依はさせないんだから!』 『ボソボソボソ……ボソ……ボソボソボソボソ……ボソボソボソボソ……!』 『お嬢の為なら何でもします。どうか助けてやっていただきたい』 顔は真剣そのもので、一糸乱れぬ協力体勢だ。 ザワつく輪の中心でジャッキーさんが声を上げた。 『絵里ちゃんを悪霊化させない為にはまず回復です。腹部までの火傷を出来る限り治す事で、身体全体に広がるまでの時間を遅らせる事ができる。という事でエイミーさん、頼みます』 呼ばれた僕は、幽霊達(みんな)の歓声を受けながら立ち上がり、絵里ちゃんの前に立った。 ジャッキーさんから高カロリーのお菓子をいただいたおかげで、だいぶ霊力(ちから)が戻ってきてる。 100%とはいかないが60…いや70%は固いのではないだろうか? さっそく僕は目を閉じ、湾曲させた両手に霊力(ちから)を溜めていく。 溜めるのはいつもの赤色ではなく、大福の毛並みのような雪色だ。 対象者を救いたい、そう強く願うとオートで霊力(ちから)が切り替わる。 充分電気が溜まったらケガをした人を光で包み、僕だけの癒しの言霊を唱えれば……回復霊術が発動するのだ。 以前、気を失った大福を言霊で回復させた事があるのだが、それ以来、術を使う機会がなかった(だってまわりは丈夫な人ばっかりなんだもの)。 少々ブランクがあるけど、まだこれで2回目だけど、お願い! どうか治せますように……! 全回復を祈りながら、溜まった白光で絵里ちゃんを包む。 目が眩むほどに輝度が上がると、少女の輪郭が徐々に光に消えていく____ ____もういいだろう、癒しの言霊を唱える時がきた。 「痛いの痛いの、宇宙の彼方に飛んでいけーっ!」 ママン!? ギャラリーがどよめいた。 や、ちょ、恥ずかしいから、そんなに視ないでくださいて。 あ……来た、この感覚だ。 言霊に反応して、一層の光と温泉に浸かったような温かさが増していく。 眩い光の中、輪郭を溶かした絵里ちゃんの『はわぁ……あったかいのですぅ』と寝落ち寸前のような声だけが聞こえてきた。
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