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『ジャッキー氏! 感謝感謝の大感謝であります! これでお嬢は悪霊化しないですむのでありましょう?』
絵里ちゃんを肩車したピンクバンダー氏が、喜びいっぱいの顔でリーダーに尋ねた。
後ろに控える幽霊達も、すこぶる笑顔で明るい答えを今か今かと待ち構えている。
『うん、エイミーさんの回復霊術のおかげでね。しばらくは大丈夫だよ』
固定の笑顔でそう言ったジャッキーさん。
その回答は、幽霊達が望むものとは少し違っていたようで、
『……ジャッキー氏? しばらく……とは? 話が違うのでは? 岡村さんの回復魔法でお嬢の火傷はだいぶ良くなったではござらんか』
あの……ピンクバンダー氏。
“回復魔法”じゃないです。
僕のは“回復霊術”なんですが……まぁ、どっちでもいいんですけどね。
『ハイ!(シャキーン!)』
律儀にも最初の約束を守るムーンラビット氏は、発言前に挙手をしてからこう続けた。
『そ、それに、お嬢は約束してくれましたぞ。ディニエルにはもう入らないって。憑依をやめれば良いとの事では?』
ただでさえ白い肌が青ざめ、不安からかセーラー服の赤いリボンをこねくり回している。
彼もまた絵里ちゃんが心配で仕方がないのだろう。
『ムーンラビット氏もみんなも……申し訳ないが、これだけでは万全ではないんだ』
なんですと!!
揃う幽霊達の声、同時に納得がいかないのか地団太を踏む幽霊達のせいで、再び盛大なポ現が発生した。
僕は慌てて振り返り、クローゼットの黒十字様を見た。
ドンドコドンドコうるさい音に、また怯えているのではないかと思ったのだが……それは杞憂に終わった。
ヘッドホンをつけたままの黒十字様に、今の騒音は聞こえていなかったらしい。
とりあえず良かった。
肩から降ろした絵里ちゃんを、ギュッと抱き締めるピンクバンダー氏。
2人を庇うように前に立つムーンラビット氏が再び『ハイ!』と挙手したのと同時に喋り出した。
『小生に出来る事はなんでもしましょう! たとえこの身が滅びても構いません! それでお嬢が助かるのなら煮るなり焼くなり蒸すなり、好きにしてぇぇぇぇん!』
ミニスカートから伸びる細い足がガクガクと揺れている。
この身が滅びても構わない、と言い切ったムーンラビット氏の言葉に嘘はないのだろう。
その覚悟が本物ゆえに震えているのだ。
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