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『…………』
「でも……初対面の男にあんな事言われて気持ち悪かったですよね。本当に申し訳ないです」
『ううん……私こそ……ごめんなさい……私あなたを殺すつもりはなかったの……でも……そんな事あなたには伝わらないのに……殺されるって思いましたよね……私……バカだぁ……殺される怖さとか、苦しさとか、悔しさとか……私が一番よく知っているのに……それなのにこんな事して……私これじゃあアイツと一緒だ……』
そう言って泣きだす田所さんに僕はなんて声を掛ければいいのかわからなかった。
彼女の言う“アイツ”とは加害者である旦那さんの事で間違いないだろう。
憎むべき加害者と同列だと自分を責める彼女に対し、うまい言葉が見つからない僕はせめてもと放つ電流の力を弱め光を抑えた。
これで泣いている顔は見えません。
だから気が済むまで泣いてください。
大丈夫。
僕はあなたが泣き止むまでいつまでも待ちますから。
しんと静まった薄闇に田所さんのすすり泣く声だけが響く。
彼女の横で膝を抱えて座る僕の視界の端っこに、一瞬何かが光った気がした。
反射的に振り向くも、そこにあるのは限りの見えない闇ばかり。
幻覚……か?
ああ、そうか。
いろんな事がありすぎて、きっと疲れてるのかもしれない……
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