第十四章 霊媒師 ジャッキー

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◆ 『絵里ちゃんの安全を第一に考えた場合、最良策はズバリ成仏しかないんだ。1度リバウンドが始まれば、それを一時抑える事はできても無かった事にはできない。そうね……アレルギーと似てるかな? 発症後、薬で症状を抑える事はできても完治は難しいでしょう? なにがきっかけで悪化するかわからない』 大きな円陣の真ん中で、ジャッキーさんが一人一人の顔を見ながら告げたのは、やはり絵里ちゃんの成仏だった。 それに対して今回、文句を言ったり地団太を踏む幽霊(ひと)は誰もいない。 幽霊達(みんな)、頭のどこかで分かっていたのだろう。 そう、絵里ちゃんだけじゃなく、自分達もいずれは成仏しなければならない事も。 『やはり……それしかないでありますか、』 そう呟いたのはピンクバンダー氏だった。 俯き気味のその顔は、淋しそうであり、それでいてどこか吹っ切れたようにも視える。 『うん。厳しい事を言うようだけど、幽霊達(みんな)の本当の居場所はココではないんだ。人は死んだら黄泉の国に旅立つのが一番良い。いつまでも現世に残れば、個人差はあれど、数年、もしくは十数年で幽体(からだ)は消滅してしまうからね』 消滅……? そうなの……? 座学でそんな話は聞いてない。 だが……考えれば思い当たる節がある。 僕が霊媒師になる前も後も、駅や街中、人がたくさん集まる場所で、知らない間に幽霊とすれ違っていたかもしれないのに、違和感を感じた事は1度も無い。 放電無しでは生者と死者の見分けがつかない僕だからこそ、たとえば大昔の江戸時代の幽霊がいれば、現代とはかけ離れた服装や髪形に違和感を感じるはずなのに。 いまだかつてそんな事は1度もなかった。 成仏を拒み彷徨う幽霊達も一定の期間がくれば消滅してしまう、そういう事なんだ。 …… ………… まさか………… 大福や先代もそうだなんて言わないよね……?
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