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『あの……!』
幽霊達に守られるように座っていた絵里ちゃんが、ぴょんっと立ち上がった。
一斉に注目を浴びた女の子は『はわわ! 緊張するのです!』と顔を赤らめている。
『はい、絵里ちゃん』
またもや学校の先生のようなジャッキーさんが、絵里ちゃんをさして発言を促した。
『あのね、絵里……ジョウブツするのです』
やっぱりか。
人一倍まわりに気を遣う子なのだ。
この流れなら自分から成仏すると言っても不思議ではない。
その方が絵里ちゃんの為にはなるのだけど、良すぎる聞き分けが切なくなってしまう。
『あの……あのね、みんなが絵里のコト心配してくれてすごく嬉しいのです。ピンク兄さまも、うさぎ兄さまも、しぇんほわ兄さまも、ロベルタ姉さまも……みんなのコトが大好きなのです。
だから……これ以上心配も迷惑もかけたくない……それに楽しかった……兄さまたちと姉さまたちと一緒にいられてすごく楽しくて、生きていた頃よりもずっとずっと幸せだったのです。
絵里、死んで良かった……死んだからみんなと逢えたんだもん……もう十分だよ……これでお別れになっちゃうけど、たまには絵里のコト思い出してほしいのです……ホ、ホントに……たまにでいいから……忘れないで……ほしいのです……』
最後の方は涙声だった。
一生懸命笑おうとするけど、赤くなった目にぶわっと涙が溜まり、瞬きと共にそれは溢れだしてしまった。
慌てたように目をこする絵里ちゃんは、自分のほっぺをペチペチと叩き、ニコーッと笑いこう言った。
『えへへ……ワガママ言っちゃった。でもね、みんなが絵里を忘れても、絵里は絶対に忘れないよ。今まで仲良くしてくれて、優しくしてくれて……いっぱい、いっぱい、アリガトなのです!』
両手を広げて感謝する絵里ちゃんに、幽霊達の涙腺は決壊した。
そして一斉に喋り出す。
『小生の方こそ感謝なのであります。お嬢はいつだって優しかった』
『お嬢がいたからこそ、我々はここまで仲良くなれたのでござる!』
『ガキんちょの方向音痴は一流ネ、黄泉のクニまで迷わず逝けるカ?』
『お嬢こそが私のサンタマリア……心より愛しています』
『お嬢は私の娘だよ、優しくて可愛い子……大好き……!』
『ボソボソボソ……ボソ……ボソボソボソボソ……ボソボソボソボソ……』
『黄泉の国に旅立つお嬢……我らの気持ちは一致しておりますぞ』
絵里ちゃんが幽霊一人一人、順番に抱きついている。
僕ら霊媒師3人は、幽霊達が落ち着くのをただ待つしかなかった。
別れのひと時をジャマするなんて、とてもじゃないができないもの。
その輪から、1人抜け出してきたピンクバンダー氏が僕らの元にやってきた。
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