第十四章 霊媒師 ジャッキー

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『ジャッキー氏、小野坂様、岡村さん……色々ありがとうございます。成仏すればお嬢は悪霊化せずにすむんですよね?』  『もちろん大丈夫です。部屋(ここ)に残れば、黒十字様の為にまたディニエルに憑依してしまうかもしれません。そうなったら取り返しがつかなくなる。黄泉の国に行けば心穏やかに過ごせるし、いつか生まれ変わる事だってできるんだ。なにも心配いりませんよ』 『それを聞いて安心しました。お嬢が悪霊化だなんて絶対に嫌だ。今よりもっと幸せになってほしいのであります。ただひとつ、心配があるとすれば……お嬢は重度の方向音痴なのであります。2回曲がれば現在地が分からなくなるほどのレベルであります』 そういや、そんな話をしていたなぁ。 比較的、女の人は方向音痴が多いと聞くが、絵里ちゃんもそうなんだな。 だけど大丈夫ですよ。 だって黄泉の国までは真っ直ぐ一本道なんだもの。 僕がそれを教えてあげようと口を開きかけた時、ジャッキーさんが『そいつは困ったな!』と大袈裟にかぶりを振った。 『そうなのです。困ったものなのであります。このままもし、お嬢1人で黄泉の国に逝かせたら……きっと迷子になって、途中座り込んで泣いてしまうのであります』 心配そうに眉根を寄せて腕を組むピンクバンダー氏。 対し、ジャッキーさんも両手を背中に回し、その場をウロウロしながらこう言った。 『黄泉の国まで、光る道を真っ直ぐ逝けば着くのだけど……絵里ちゃんの方向音痴はスゴイらしいからねぇ。もしかしたら一本道でも迷うかもしれないねぇ。心配だ、こりゃあとんでもなく心配だよ、』 ジャッキーさんとピンクバンダー氏はお互いをチラチラ視ながら、ワザとらしく溜息をついている。 なんだろう? だんだん小芝居がかってきたような気がするんだが…… 数度の溜息の後、至って真面目な顔のピンクバンダー氏が言った。 『子供が迷子になると分かっていながら、大人が付き添わない訳にはいきますまい。そう思わんか、ジャッキー氏』 『うむ、それは同意せざるを得ない。時にピンクバンダー氏、付添いの大人は多ければ多いほど安心だと思うのだが?』 『デュフッ! ジャッキー氏を安心させるに充分な人足でありますよ。我らの気持ちはいつだって1つ、お嬢なしでは死んだも同然。付き添いは全部で24人! 当然であります!』
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