第十四章 霊媒師 ジャッキー

80/100
前へ
/2550ページ
次へ
『黒十字様、まずは落ち着きましょう。ここにいる幽霊達は騒がしいだけで善良な霊達です。その証拠に黒十字様もお母さまも無傷のはずです。襲われたりしていないでしょう? 違いますか?』 「善良? 幽霊に善良もなにも! あぁ……ん、まぁ、言われてみれば……確かに……うるさかったけど、襲われた事はないなぁ。幽霊が原因でケガもないし。母親が風邪を引いた日に限って一日静かだったような気も……あれ? もしかして……悪い幽霊ではない……?」 考え込む黒十字様に、幽霊達は赤ベコのごとく首を縦に振っている。 「いやでもなぁ……そうは言っても怖かったしなぁ……や、でもなぁ……」 前言撤回しかけた黒十字様に、今度は両手を合わせてゴメンのポーズを取り始める幽霊達。 『そうですよね、怖かったですよね』 と黒十字様の気持ちを汲むジャッキーさんが声をかけた。 「まぁね、」 『幽霊達もうるさくしすぎたと反省しているようです。部屋の真ん中あたりに総勢25名揃っていますが、全員、黒十字様に向かってゴメンナサイをしてますよ』 そう言ってジャッキーさんは、幽霊達(みんな)のポーズを真似て合掌をした。 「えっ、そうなの?」 黒十字様に幽霊達の姿は視えないが、言われた部屋の真ん中に目線を移すと、幽霊達が一斉に手を振った。 『(はく)ーっ! ココにいるでありますよー!』 どんなに手を振っても、その姿は映らない。 ああ、黒十字様に霊感があればなぁ。 直接話せたら、幽霊達(かれら)に悪意が無い事はすぐに分かると思うんだ。 『ボソボソボソ……ボソ……ボソボソボソ……』 声小っさ! 危うく聞き逃すトコだった……って、注意して聞こうとしてもやっぱり聞こえないんだけどさ。 声の小さなあの人は、アーミーカラーの軍服に勲章らしきバッジをたくさんつけている。 軍帽を深くかぶり表情も性別も伺えないが、細身の身体とそう高くない身長は、もしかしたら絵里ちゃんより少し年上くらいなのかもしれない。 おそらく少年と思われる声の小さなその人は、幽霊達(みんな)に向かってボソボソとなにかを話している。 内容は分からないが、『なんと!』『デグさん氏、天才すぎッ!』『いよっ! 軍隊オタク!』という合いの手だけは大音量で聞こえてくる。 てか、その合いの手じゃ話の内容がさっぱりわかりませんぞ!(ヤバッ! 語尾がピンクバンダー氏になってしまった!) 「でもなぁ……イマイチ信じられないなぁ……だって志村さんが幽霊を庇ってるかもしれないし。俺がこれ以上怖がらないようにウソ言ってるとかじゃない? 俺には幽霊が視えないし話もできないから、分からな、」 黒十字様がまたも幽霊に疑いをかけたその時だった。 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!! なにを考えているのか、幽霊達が壁や床を激しく叩き始めた。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加