第十四章 霊媒師 ジャッキー

82/100
前へ
/2550ページ
次へ
狂戦士と化したデグさん氏の号令で、オタク幽霊達と絵里ちゃんまでもが一心不乱に床を、壁を、叩き始めた。 ダーッダッダッダッ ダッダッダッダーッ! 「やめてくれー!」と叫ぶ黒十字様、興味なさげに漫画の続きを漁る水渦(みうず)さん、最初こそ止めようとして、それをやめたジャッキーさん、オロオロするしかない役立たずの僕の目の前で何度も何度も音を鳴らす幽霊達。 どうしちゃったの!? これじゃあもっと誤解されちゃうよ! 僕の心配をよそに音は力を増していく。 壁を引きずり、床を蹴りとやりたい放題だ。 ダーッダッダッダッ ダッダッダッダーッ! 「やめろ! やめてくれー! 俺が悪かったー!」 悲痛な黒十字様の声など聞こえないかのように音は止まらない。 ダーッダーッダーッダーッ ダッダッ ダーッダッダッダッダーッ ダッダーッダッダーッダッ! 「もうヤダ……なんなんだよ……コレ……」 うんざりした掠れ声が黒十字様の疲労を感じさせる。 ピンクバンダー氏、ムーンラビット氏、デグさん氏、絵里ちゃん、他のみんなもお願いですからもうやめてください! ダーッダーッダーッダーッ ダッダッ ダーッダッダッダッダーッ ダッダーッダッダーッダッ! 「ひぃぃぃ! もういい加減に……って……ん? コレ……さっきと同じリズムじゃないか?」 さっきと同じリズム? 僕にはよくわからないけど、なにか考えているようで黒十字様の震えが止まった。 ダーッダーッダーッダーッ ダッダッ ダーッダッダッダッダーッ ダッダーッダッダーッダッ! 「…………!! これもしかして! ……コ……? いや、違う、ゴだ……それから……メ……最後は……ン? ……ゴメン……? “ごめん”なのか? なぁ! そうなのか!?」 毛布の中からガバッと顔を出した黒十字様は、視えない宙に向かって疑問を投げかけた。 えっと……“ごめん”って、なんの事?
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加