2366人が本棚に入れています
本棚に追加
時計の針が12時をこえた深夜。
まだまだ盛り上がっている黒十字様達を横目に、僕と水渦さんはジャッキーさんのアイテムリュックからカップ麺を頂いている。
現場入りしてからお菓子しか食べてないから、おなかペコペコだったのよね。
ジャッキーさん、本当にありがとうございます!
「誰かと一緒に夕飯を食べるのは、姉と住んでいた頃以来です、」
ズルズルとラーメンを啜りながら、そう呟く水渦さん……マジか。
まあ、友達1人もいないって言ってたもんなぁ。
てか、お姉さんと住んでいた頃以来って……それ何年前の話だよ。
僕も一人暮らしだけど、ごはんは毎日大福と一緒だからめちゃくちゃ楽しいし、たまには学生時代の友達と食べたりもする。
なのに水渦さんは、ここ何年もずっと1人で食べてるんだな……淋しくないのだろうか?
「あの、水渦さん。良かったら今度ゴハンを食べに行きませんか? ジャッキーさんも一緒に、ココの現場の打ち上げって事で」
水渦さんの食事がいつも1人ってのも気になるけど、僕の最後のOJTに同行し、助けてくれた2人には改めてお礼を言いたい。
それなら3人で……と切り出してみたのだが、途端、水渦さんの動きがピタっと止まった。
箸に挟まる一口分の麺はそのままに、ぎこちなく顔を上げると、まるで宇宙人でも見たような顔でこう言った。
「ご飯って、私とですか?」
「え? はい、ジャッキーさんと水渦さんと僕のスリーマンセルで、どうかなぁって思ったんですけど、」
「……はぁ、」
あれ……?
なんか反応薄くない……?
ヤバッ……!
迷惑だったかな!?
やっちまった!
「あの、すみません! ジャッキーさんはともかく、僕とゴハンなんてイヤですよね! 忘れてください! ははは、はははは……」
うわー!
空回った!
水渦さん、微妙な顔してるよ!
ココは笑ってうやむやにしようと必死になっていると、
「嫌ではありません、」
「ですよね! なんかすみませ……って、えっ! いいんですか?」
まさかの承諾!(だよね?)
「構いません。今のは打ち上げとやらに誘われた事が無かったものですから、少々驚いただけです」
「……誘われた事、ないんですか? 今まで? 1度も? 忘年会や新年会、歓送迎会とかそういったのもですか?」
「はい、皆無です。私と食事をすると味が不味くなると、昔いた清掃会社で言われました」
「……ヒドイな。それ言った人おかしいですよ。だってこのラーメン、すごく美味しいもの。水渦さんと一緒に食べてるからですよ。1人だったら、きっと美味しさ半減です」
気を遣っているんじゃない。
誰かと一緒なら、ただのカップ麺も本当に美味しくなるのだ。
「ふうん……、」
手にしたカップ麺をジッと見つめ、しばし考え込んでいた水渦さんだったが、「早く食べないと伸びますよ」と声をかけると、無言で麺を啜り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!