第十四章 霊媒師 ジャッキー

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時計の針が12時をこえた深夜。 まだまだ盛り上がっている黒十字様達を横目に、僕と水渦(みうず)さんはジャッキーさんのアイテムリュックからカップ麺を頂いている。 現場入りしてからお菓子しか食べてないから、おなかペコペコだったのよね。 ジャッキーさん、本当にありがとうございます! 「誰かと一緒に夕飯を食べるのは、姉と住んでいた頃以来です、」 ズルズルとラーメンを啜りながら、そう呟く水渦(みうず)さん……マジか。 まあ、友達1人もいないって言ってたもんなぁ。 てか、お姉さんと住んでいた頃以来って……それ何年前の話だよ。 僕も一人暮らしだけど、ごはんは毎日大福と一緒だからめちゃくちゃ楽しいし、たまには学生時代の友達と食べたりもする。 なのに水渦(みうず)さんは、ここ何年もずっと1人で食べてるんだな……淋しくないのだろうか? 「あの、水渦(みうず)さん。良かったら今度ゴハンを食べに行きませんか? ジャッキーさんも一緒に、ココの現場の打ち上げって事で」 水渦(みうず)さんの食事がいつも1人ってのも気になるけど、僕の最後のOJTに同行し、助けてくれた2人には改めてお礼を言いたい。 それなら3人で……と切り出してみたのだが、途端、水渦(みうず)さんの動きがピタっと止まった。 箸に挟まる一口分の麺はそのままに、ぎこちなく顔を上げると、まるで宇宙人でも見たような顔でこう言った。 「ご飯って、私とですか?」 「え? はい、ジャッキーさんと水渦(みうず)さんと僕のスリーマンセルで、どうかなぁって思ったんですけど、」 「……はぁ、」 あれ……? なんか反応薄くない……? ヤバッ……! 迷惑だったかな!? やっちまった! 「あの、すみません! ジャッキーさんはともかく、僕とゴハンなんてイヤですよね! 忘れてください! ははは、はははは……」 うわー! 空回った! 水渦(みうず)さん、微妙な顔してるよ! ココは笑ってうやむやにしようと必死になっていると、 「嫌ではありません、」 「ですよね! なんかすみませ……って、えっ! いいんですか?」 まさかの承諾!(だよね?) 「構いません。今のは打ち上げとやらに誘われた事が無かったものですから、少々驚いただけです」 「……誘われた事、ないんですか? 今まで? 1度も? 忘年会や新年会、歓送迎会とかそういったのもですか?」 「はい、皆無です。私と食事をすると味が不味くなると、昔いた清掃会社で言われました」 「……ヒドイな。それ言った人おかしいですよ。だってこのラーメン、すごく美味しいもの。水渦(みうず)さんと一緒に食べてるからですよ。1人だったら、きっと美味しさ半減です」 気を遣っているんじゃない。 誰かと一緒なら、ただのカップ麺も本当に美味しくなるのだ。 「ふうん……、」 手にしたカップ麺をジッと見つめ、しばし考え込んでいた水渦(みうず)さんだったが、「早く食べないと伸びますよ」と声をかけると、無言で麺を啜り始めた。
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