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◆
それから更に2時間。
ジャッキーさんの愛情カップ麺で腹の膨れた僕と水渦さんは、あろうことか仕事中に寝落ちした。
「んも……大福ぅ……」
「清水……シネ……」
お互いの寝言で目を覚ました僕達は、痛む身体をさすりながら(水渦さんは悪態もついていたよ!)ノロノロと起き上がる。
我らがリーダーは、ダメ部下2人の起床に気が付くと、『おはよ、よく寝てたから起こさなかったんだ』と怒りもしない、神か。
ああ、もう、この人には頭が上がらないよ。
ジャッキーさんも眠いだろうに、本当にすみませんでした。
だけど眠れたおかげで頭はだいぶスッキリしている。
普通に寝る5時間よりも、寝落ちの2時間の方が眠りが深いんだろうな。
しかし我ながら幽霊達がトンツートンツーうるさい中よく眠れたよ……あ、でも今は静かじゃない?
さすがにみんな喋り疲れたのだろうか。
まだちょっとだけ眠い目を擦り、黒十字様と幽霊達の様子を視てみると、
「もっと早くに、こうなれたら良かったのにな」
そう言ってベッドに転がる黒十字様が、なんだかとても淋しそうに見えた。
ベッドのまわりには絵里ちゃん含む総勢25人の幽霊達がいて、やはり淋しそうに眉を寄せている。
『そうですなぁ。白の傍にいるだけでも十分楽しかったでありますが、やはり意思疎通が出来ると出来ないとでは全く違いますな』
ピンクバンダー氏の呟きに、幽霊達しんみりと頷き合っていた。
ベッドで仰向けになっていた黒十字様が、両手を天井に向かって伸ばした。
手指を広げたまま、何かを探しているようにヒラヒラと動かしている。
「なぁ、みんな。俺の手に触れてみてくれないか? たぶん分からないだろうけど、最後にさ、握手というか、まぁ、そんな気分なんだ」
と照れたように笑った。
____ダンダー ダーダンダーダーダー ダーダーダーダンダー
その音は、さっきまでの思い切り床を叩いていたのとまるで違う。
静かで、それでいて柔らかい。
「“イエス”か。へへ、なんか恥ずかしいな。あ、待って。俺、ちゃんと起きるから」
モゾモゾと起き上がった黒十字様はベッドの上で正座をすると、トレーナーのおなかの部分で両手をゴシゴシと擦り始めた。
それを見た幽霊達も黒十字様にならって手をゴシゴシ。
さらにそれを視た絵里ちゃんも、ワンピースでゴシゴシしようとしたのだけれど、ムーンラビット氏がセーラー服の赤いリボンで優しく拭いてあげていた。
なんか、お母さんみたいだな。
ふわりふわりと、オタク幽霊達が黒十字様に近づいていく。
前に、横に、上にと、25人もいるものだから、集まりきった頃には黒十字様の姿は、すっかり見えなくなってしまった。
____小生、白殿を忘れませんぞ、
____幅広いジャンルに通じていたでござるな、
____世界でニ番目にイイ女はチャイニーズネ、一番はガキんちょアル、
____白様にサンタマリアのご加護があらんことを、
____ウチらがいなくなっても元気でね、
____ボソボソボソ……ボソ……ボソボソボソ……
____少しずつで良い、強くなってください、
____白、ありがとう、
____楽しかった、
____感謝、
____
______
_________にぃに、
幽霊達が団子のように重なったその奥から、絵里ちゃんのキャンディーボイスがまぎれ聞こえてきた。
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