第十四章 霊媒師 ジャッキー

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________にぃに、今まで楽しかったのです、 絵里が生きてた頃……公園で、にぃにがくれた小さなお人形、 ずっとずっと宝物だったんだよ、 お母さんに見つかると捨てられちゃうから、 秘密の場所に、大事に大事にかくしていたのです、 フリルがいっぱいついた、お姫様みたいなドレスがすごくカワイくて、 絵里もこんなの着てみたいってずっと憧れていたのです、 新しいお洋服なんて買ってもらったコトがないから、 お母さんにおねだりなんてできないから、 いつか大人になったら着てみたいと思ってたのです、 それなのに絵里、大人になる前に死んじゃって、 もうドレス着れないってあきらめてたのに、 目が覚めたら、絵里、お姫様のドレスを着ていたのです、 お人形と同じピンクのドレス、フリルもレースもみんな一緒なの、 すごくすごくビックリしたのです、 すごくすごく嬉しかったのです、 どうしてドレスを着ているのかわからなかったけど、 にぃにが、あのお人形をくれなかったら、 きっとドレスは着れなかったのです、 嬉しくて、にぃにに見せたくて、 にぃににアリガトって言いたくて、 だから絵里、この家に来たのです、 にぃにに絵里は視えなかったけど、 ディニエルさんに入れば、いっぱいおしゃべりできたから、 すごく楽しかった、 にぃにに抱っこしてもらうと、あったかくて安心したのです、 絵里、にぃにの本当のお嫁さんになりたかったな、 にぃにとお別れするの淋しいな、 でも、絵里には優しい兄さまと姉さまがたくさんいるから、 もう、独りじゃないから、 ダイジョウブなのです、 さいごにディニエルさんじゃなくても、 絵里だってわかっても大好きって言ってくれて、 ホントにホントに、アリガトなのです、 絵里もにぃにが大好き、 にぃに、先に逝くね________ …… ………… ……………… 「ディニエル……いや、絵里……俺の方こそありがとな。絵里がいなくなるのは淋しいよ、辛いよ。でも……ココにいたら絵里がダメになるんだよな。だから俺、我慢するよ。強くなるよ。いつかまた逢える日まで、俺、頑張るから……絵里……近くにいるのか? みんなも……へへへ……なんだかすごくあったかいや」 幽霊に埋もれた黒十字様の声。 掠れているのは泣いているのだろうか? 深夜の薄暗い部屋の中、それを確かめる術はなかった。
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