第十四章 霊媒師 ジャッキー

91/100
前へ
/2550ページ
次へ
パソコンの青い光が、ジャッキーさんの放つ緑の光に呑み込まれた。 部屋全体、まるでライトアップされた森のようで、モノに溢れる乱雑さは生い茂る木々のように視える。 『キレイなのです……』 ムーンラビット氏に手を繋いでもらっている絵里ちゃんが、目をキラキラさせながら呟いた。 『気に入ってもらえたかな? だけどこんなモンじゃないよ? オジサン、お姫様の為に頑張っちゃうからね』 ジャッキーさんの“頑張る宣言”の直後、全長40センチのフィギュア(からだ)がひときわ強く光を放った。 向かい合わせた両手首をくっつけて、花のように広げた手のひらからは、『アイヤーッ!』の気合を入るたびにシャボン玉のようなモノを出現させる。 不思議な光景だった。 ほんの数分で、乱雑な部屋の中が発光の森へと変わり、虹色に揺らめく透明の球体がふわりふわりと宙を漂っているのだ。 その光に照らされた絵里ちゃんと幽霊達の表情は明るい。 まるでみんなで手品でも視ているかのように弾んでいる。 短い滞空時間を終えたシャボン玉は次々と落ちては消えていく。 一つ消え、二つ消え、三つ消え、消えた分だけ光の粒が生まれ浮遊し、それは森の中を優しく飛ぶ蛍さながらだった。 『水渦(みうず)さん、』 ジャッキーさんが目配せをする。 小さく頷いた先輩霊媒師は、閉じたままのカーテンを開け、横開きの窓を全開にした。 冷たい風が部屋の中に流れ込んできた刹那、遠い夜空から金色(こんじき)に光る大きな道が、ゆっくりとこちらに向かって伸びてくるのが視えた。 いよいよだ。 幽霊達(みんな)は、あの道に乗って黄泉の国に逝く。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加