第十四章 霊媒師 ジャッキー

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◆ 『みんな準備はいいかな?』 金色(こんじき)に輝く道の上、筋骨逞しい戦馬に跨る25人のオタク幽霊達。 身体の小さな絵里ちゃんに限っては、ピンクバンダー氏と一緒に乗っている。 窓の内側から幽霊達(みんな)を視上げ、最後のお見送りだ。 『黒十字様の戦馬は、優しい()ばかりなんだ。決して暴れたり暴走したりしないから安心して。人の言葉も分かるから、進んでとか止まってとか声をかけてくれたらいいからね』 ジャッキーさんが、馬について説明しているというのに、肝心の幽霊達はまったく聞いちゃいなかった。 『小生、キマッテルでありますかぁ!?』 『ピンクバンダー氏ばっかり、お嬢を独り占めはダメですぞ!』 『これなラ、ガキんちょも迷わないネ!』 『この馬をサンタマリアと名付けましょう……』 『馬の目って優しいなぁ、心が洗われるぅ』 『ボソボソボソ……ボソ……ボソボソボソボソ……ボソボソボソボソ……』 『懐かしいでござる……馬に跨るは久方ぶりで感無量!』 いやぁ、もう騒がしい。 最後の最後まで騒がしい。 でも、まぁ、いっか。 笑い声でうるさいんだもの。 良いコトだよ。 『すごくかわいいのです! 絵里、お馬さん大好き!』 馬の首にヒシッと抱き着く絵里ちゃんが、あまりの興奮に足を前後にバタつかせていた。 あんなにはしゃいで可愛いなぁと思ったのも束の間、彼女の細い足は水膨れは治ったものの、まだまだ赤い薄皮の皮膚が痛々しい。 ああ、全部治してあげられたら良かったのに。 僕の霊力(ちから)不足のせいで本当にごめん。 治してあげたかった…… ………… ………………あ……まてよ……? そうか! 治せるじゃないか! 「絵里ちゃん! 聞いて! 足の火傷なんだけど!」 僕の呼びかけに、絵里ちゃんはもちろん、オタク幽霊達も一斉に目線を下げた。 「黄泉の国に着いたら、大澤先生にヤケドを治してもらうといいよ。その人お医者さんなんだ。優しくて腕の良いお爺ちゃん先生なの。綿あめみたいな白髪頭で小柄な白衣の人を探してみて。もし分からなければ、点滴スタンドでポールダンスを踊る、ぽっちゃりで汗っかきなタカシさんっていう若い男性看護師さんならすぐ見つけられると思うんだ。大澤先生は、必ずその人の近くにいるはずだから!」 『おぉ!!』 25人分の歓声兼、返事が重なった。 前回の現場で知り合った、廃墟病院で悪霊のフリをしていた大澤先生なら、絵里ちゃんの火傷を治してくれるはずだ。 大澤先生、絵里ちゃんの事、どうぞよろしくお願いしますね。
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