第十四章 霊媒師 ジャッキー

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『ジャッキー氏、岡村さん、小野坂様。なにからなにまで、お世話になりました。我輩達、そろそろ逝きます』 手綱を握るピンクバンダー氏とオタク幽霊達が、僕達に向かい揃って頭を下げてくれた。 僕らも同じく頭を下げながら、 『我が同志達よ、道中楽しんでくれたまえ!』 「みなさん、お気をつけて」 「…………」 ん、そうね。 水渦(みうず)さんは無言だったけど、きっと「バイバーイ!」とか思ってるんじゃないかな?(ないか) 『それから、(はく)にも伝えてください。楽しかった、ありがとうと。光る道(ココ)には叩ける壁も床もないからトンツーが打てませんので、』 残念そうなピンクバンダー氏に、『必ず伝えるよ』とジャッキーさんが答えると、安心したようにデュフフと笑った。 そして、 『それでは……コホン! やぁやぁ、我らこそは【お嬢を愛でる会】なるぞ! 新たな聖地、黄泉の国に向かって出発でござるぅ!』 声高らかに叫ぶピンクバンダー氏に『エイエイオー!』と、合ってるんだか合ってないんだかよく分からない掛け声で答えたオタク幽霊達は、満天の星空を近くで楽しみながら、黄泉の国へと旅立っていった。 ◆ 「逝っちゃいましたね、」 幽霊達(みんな)の後ろ姿が、星空に溶けて視えなくなった。 これにて黒十字様からのご依頼は、任務完了となる。 無事に終わって良かった……だけど、なんだろう? この、どんよりした空気は。 ああ、あれだ。 依頼者である黒十字様が抜け殻のようになっているからだ。 『黒十字様、総勢25名。無事、成仏しましたよ』 ジャッキーさんが、そう声をかけるも「あぁ、そう……みんな逝っちゃったんだぁ」と半泣きだ。 「せっかく仲良くなれたのになぁ……アイツら悪い幽霊じゃなかったのになぁ……もっと早くトンツーしてくれたらなぁ……でも……ココにいたら絵里が…あぁ……もう、なんでこうなっちゃうんだよ……淋しいなぁ……」 そのままベッドにひっくり返りグダグダと愚痴を溢す黒十字様に、僕とジャッキーさんは顔を見合わせて苦笑い。 まぁ、無理もない。 トンツーで分かり合えた数時間、黒十字様は本当に楽しそうだったもの。 依頼としては無事に終わった。 だけど、これでいいのだろうか? せっかくポ現が解決したというのに、こう抜け殻じゃぁ……どうしたもんだろうか。
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