第十四章 霊媒師 ジャッキー

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「そりゃ……変わりたいよ……でも……すごく怖いんだ。はは……笑えよ。こんな俺の気持ち、誰にもわからないさ。『力が欲しいか』なんて無責任に煽らないでくれ。志村さんはただの霊媒師。お祓いが終われば2度と会う事もない……それとも俺の社会復帰に協力してくれるのか? 無理だろう? だったらもう放っておいてくれ、」 『(はく)よ……協力があれば勇気がでるのだな?』 「え? まだ言う? でも、まぁ、誰かが手伝ってくれたら……心強いけど、でも、」 トゥッ! 華麗なるバク宙で、パソコンのキーボードの上に着地したジャッキーさんは、ガショガショガショガショと、なにやら高速でステップを踏み始めた。 「な、なにしてんだよ!」 声を上げる黒十字様を手で制し、最後にエンターキーを蹴り上げると、無言でモニターを指さした。 ジャッキーさんの指先を目で追った終点。 映し出された画面を食い入るように見詰める事、数十秒。 「え……? コレって……」 『東京都K市にある、引きこもり支援ボランティア団体のホームページです。ここに連絡してください。親身になって相談に乗ってくれますよ。自分も、霊媒師の仕事が休みの時はボランティアとして支援しています。どうです? 一緒に頑張ってみませんか?』 モニターからジャッキーさんへと視線を移した黒十字様は、なにか言おうとして口を開くも、動揺しているのか言葉が出ない。 『大丈夫ですよ。最初の一歩は怖いかもしれないけど、黒十字様は独りではありません。同じ悩みを持つ仲間がたくさんいますから』 カショっと音をさせ、キーボードの上に胡坐をかいたジャッキーさんに、黒十字様が掠れた声でこう聞いた。 「お、お、俺にできるかな……?」 『できますとも』 「……か、簡単に言うなよなッ! 俺、電車に乗るのだって怖いんだ。K市まで行けるかどうか……」 『電車が怖いなら、自転車で行けばいい。とにかく踏み出す事です。怖いのは最初の一ヶ月。それを越えればなんとかなります』 「…………」 『もしかして疑ってますか? 大丈夫、実証済みです。黒十字様の気持ちは痛い程わかるんですよ。……13年前、自分も引きこもりでしたから』
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