第十四章 霊媒師 ジャッキー

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◆ 時刻は8時40分。 水渦(みうず)さんがコインパーキングから車を出している間に、僕は社長に完了報告の連絡を入れた。 「もしもし? おつかれさまです、岡村です。神奈川の現場ですが無事完了しました。後日報告書を作成しますが、幽霊が25人もいて……あっ、いえ、滅さずにすみました、全員円満成仏です。光る道はジャッキーさんが呼んでくれて……はい! 視ました! すごかったです! はい、はい、今日はこのまま直帰ですね。僕と水渦(みうず)さんは今日と明日がお休み、ジャッキーさんは明々後日まで、わかりました。伝えます」 手短に報告を終えた僕は、スマホをポケットにしまいながら、 「聞いての通り、今日は全員このまま直帰でいいそうです」 と肩に乗るジャッキーさんに声をかけた。 『良かった。結局徹夜になっちゃったからねぇ。これから会社に戻って報告書じゃあキツイもの。エイミーさん、どうもおつかれさまでした。疲れたでしょう?』 「いえ、ジャッキーさんは完徹だけど、僕と水渦(みうず)さんは途中で寝ちゃってますから……そんなに疲れてないです。ははは、本当にすみません」 そう。 僕と水渦(みうず)さんは途中2回も眠ってしまったのだ。 1回目はカップ麺を食べた後の寝落ちで2時間。 2回目はオタク幽霊達を黄泉の国に送り出した後に2時間、合計4時間もスヤスヤしちゃったのだ。 僕と水渦(みうず)さんが寝ている間、徹夜組のジャッキーさんと黒十字様は、大いに語り合ったそうだ。 引きこもりから抜け出したいけど、外に出るの怖い無理……!  とガクブルする黒十字様に、引きこもり支援ボランティア団体に連絡してみてはと提案したジャッキーさん。 話の流れで、ジャッキーさんが元引きこもりだとカミングアウトしてから、がぜん食いついてきた黒十字様。 どうやって社会復帰したのか? 仕事の面接で、引きこもっていた空白期間を突っ込まれたらなんと返せばいいのか? 年下に仕事を教わるのに抵抗はなかったのか? そもそも人と話せたのか? 等々。 尽きぬ質問を次々投げる黒十字様と、一つ一つ丁寧に答えるジャッキーさんの会話を傍で聞いていた僕と水渦(みうず)さんだったが、すっかり日が昇り6時になるかならないかの所で意識が飛んだ。
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