第六章 霊媒師OJT-2

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眼前に広がる満開の桜の花に僕は跳ね起きて出来を確認する。 僕の桜に幹はないけど、闇に浮かぶ発光の花は遥か向こうまで咲き溢れていた。 放電したこの場所から360度、どこを見ても桜、桜、桜……ライトアップされた夜桜のような仕上がりだ。 造っておいた電気の桜は百輪弱、これを元に同じものを放電時に複製し宙に放す。 電気のコピー&ペーストだ。 イメージだけでうまいくか心配だったけどなんとかなった。 僕の直線距離での最大飛距離は約1m、でもこれなら桁違いに距離が伸びる。 社長や先代がが見たら褒めてくれるだろうか……? 褒められたいな。 エイミーすごいじゃないか! この見事な満開の桜って……いや、桜は言いすぎか。 近づいてよく見ると花の形は不揃いだし、色が少し濃いかもしれない。 だけどまあ、目を細めればおおよそ桜と言えなくもないから総評60点と行ったところか。 質より量な感じは否めないが、田所さん喜んでくれるといいな…… 僕の数メートル先にいる田所さんは、右に左に忙しく顔を動かしていた。 時折『なんで? どうして?』の声が混じり、桜の花に触れようとしてるのか、細い腕を懸命にのばしている。 爪先立ちの彼女の指先がやっと一輪の花を捉えた。 途端、その花は蛍のように仄かに光る。 幽霊と電気の桜が接触すればそうなるのは当然だが、知らない彼女は一瞬驚いて手を引っ込めると、慌てて僕に振り返った。 僕は彼女に笑って見せる。 彼女は何か言いたげに数瞬僕を見つめたが、またすぐに前を向き、指先を桜につけては光らせて引っ込めて、それを何度も何度も繰り返していた。 良かった……田所さん、楽しそうだ。 どのくらいそうしていたのか。 僕は仰向けに寝転んで、静かにはしゃぐ田所さんを眺めながら時折指先から放電し、桜の花が散らないようにメンテナンスを行っていた。 会社建物を守る蔦の結界。 あれを思い出した僕は一か所起点を決め、そこから電気を補充していた。 そんなに補充はいらなそうだけど念の為。
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