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ジャッキーさんの本体に会えるのを楽しみにしていた僕は、もう色々と、総合的に、全方向、とにかく釘付けだった。
釘付けすぎてウッカリ返事をすっ飛ばした僕のかわりに、隣にいた水渦さんが答えてくれた。
「おつかれさまです。地図アプリのナビ通りに来ましたので迷わず来れました。本日はよろしくお願いします」
キチっと頭を下げる水渦さんに、「あはは、固いよ」と破顔するジャッキーさん。
僕もそのあとに滑り込み、
「昨日はおつかれさまでした。こちらのジャッキーさんとは初めましてです……って、なんか変な感じですね。すっかりフィギュアの姿に慣れてしまったから……僕さっき、見過ぎでしたよね、すみません!
あ、それとこれ良かったら、お土産のケーキです」
声をかけられたのに無言で返してしまった事をお詫びしつつ、ベベのケーキを手渡すと、目尻にたっぷりのシワを寄せ笑ってくれた。
「あははは、そうだよねぇ。丸一日フィギュアの自分と一緒にいて慣れてきたと思ったら、翌日は生身の本体とご対面だもの。そりゃあ混乱するよ。しかもこんなオジサンだし。でもまぁ、今日はぜひ本体にも慣れてってちょうだい。さぁ、とにかく上がって!」
玄関を入ると絨毯の敷かれた廊下があり、その突き当りのリビングダイニングに通された。
「2人共、好き嫌いはないって言ってたよね? すぐに用意できるから、テキトーに座ってて」
言いながら、壁にかかったエプロンを流れる動作でザッと取り、マントを羽織る優雅さで装備したジャッキーさんは、キッチンスペースへと進む。
カチカチっとコンロに火を着ける音がして数分後。
温め中のお鍋からすこぶる良い匂いが漂って、途端僕のおなかがギュルギュルと鳴り出した。
ヤバッ!
ちゃんと朝ご飯食べてきたのに!
「今の腹の虫は水渦さん? それともエイミーさん?」
ジャッキーさんのからかうような質問に、「岡村さんです」と淡々と答える水渦さん。
ちょ!
恥かしっ!
「あははは、嬉しいなぁ。自分、腹ペコの子にゴハンを食べさせるのが大好きなんだ。今日のランチはビーフシチューとサラダとキッシュ。パンは一応自家製だよ。大量に作ったからいっぱい食べてね!」
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