第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「霊能者によって、みんな違うんですねぇ。僕にその玉は視えないけど……アレですか? 幽霊映画に出てくるような、火の玉みたいな感じ?」 首を傾げつつそう尋ねると、 「ああ、うん。火の玉っぽいと言えばぽいかなぁ? 玉は霊の精神状態によって形が変わるんだ。平常時は真円に近いけど、動揺したり怒ったり悲しんだり、そういった感情の乱れで形が崩れるから、揺らめく炎に視えなくもないかもね」 と答えてくれた。 ふうん。 という事はジャッキーさんから視れば、霊の感情丸わかりなんだな。 「さらに言えば、悪霊は玉の色が暗色なの」 「悪霊と善良な霊とじゃ色が違うんですか?」 「うん。善良な霊の玉は青白いんだけど、霊の心が負に傾くと玉に濁りが生じるんだ。溜めた水に墨汁を垂らしたみたいにね。負の感情が大きくなればなるほど濁りが進む。怒り憎しみ悲しみ妬み、そういったマイナスの感情に心が支配された時、頭上の玉は光を失い真っ黒になる。そうなれば元には戻れない。己を見失い、生者にも死者にも害を成すだけの存在になってしまうんだ」 そう言って、淋しそうに目を伏せるジャッキーさんは、こうも続けた。 「できれば誰も悪霊になんかさせたくないよね、笑って成仏させてあげたいよね。だけど人の心は弱いからさ。どんなに心を強く持っていても、落ちる時は一瞬で闇に落ちるんだ」 落ちる時は一瞬、か。 僕には……正直よくわからない。 けど……僕より一回り以上年上で、生者にも死者にも優しいジャッキーさんが言うのなら、そう思うだけの何かがあったのかもしれない。 黒十字様に話していた、元引きこもりだったという過去と関係あるのだろうか? 「……あの、ジャッキーさん、」 「ん?」 ジャッキーフィギュアの固定笑顔とはまた違う、血の通った優しい顔を僕に向けた。 「あ、いや……もう一つ聞きたい事がありまして、」 ジャッキーさんに聞きたい事はたくさんある。 だけど、ジャッキーさんは? あまり聞いてほしくない事だってあるだろう。 引きこもっていた過去も気にならないと言えばウソになるけど、簡単に聞いて良い事じゃあない。 「なんだい? オジサン、分かる事ならなんでも答えちゃうよ?」 キッシュを食べながら身を乗り出すジャッキーさん。 この人の笑顔が曇る事は聞きたくないや。 よし、次の質問はコレだ! 「あの! 現場で光の道を呼んだ時のコトなんですけどッ! 根ほり葉ほり聞いちゃって良いですか!?」
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