第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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「ジャッキーさんが言っていた、【黄泉の国、第98霊力(パワー)サーバー】ってなんですか? それと霊力(ちから)の転送? とか言ってませんでした? アレ、どういう意味なんです? てか、このジャムうまっ! マンゴー!」 質問しながらパンを一口かじった瞬間、衝撃が走った。 なにこのジャム……! うまい……うますぎる! 聞けば小瓶のジャムは手作りで、安く売ってたマンゴーを使ったという。 もうね、霊力(ちから)の事も知りたいけど、それと同じくらい今日のメニューのレシピが知りたい。 絶対に聞いて帰ろうと心に決めて、まずは第98霊力(パワー)サーバーのコトを聞く。 「サーバーって知らない? この世で言えば各種サービスを提供するコンピュータで……」 シチューばかり食べる水渦(みうず)さんに「野菜も食べなさい」と、サラダを取り分けるジャッキーさんが、コンピューターサーバーの説明をし始めた。 いや、それは分かりますけど、黄泉の国のサーバーでしょう?  しかも霊力(パワー)サーバーっていうくらいだから、特殊なんじゃないですか? 「この世のサーバーと似たようなモンだよ。提供するサービスがデータか霊力かの違いだけ。黄泉の国にあるサーバーは、公式な物だと第1から第9999まであるんだ。それらのサーバーにアクセスして必要な霊力を転送……分かりやすく言えばダウンロードして、得た霊力(ちから)をこの世で実行してるの。使いたい霊力(ちから)によってアクセスするサーバーが変わるけど、自分は大体決まったサーバー、98機を使うかな」 丁寧な説明をしてもらったにもかかわらず、意味が全然わからない。 「えっと……不勉強でゴメンナサイ。黄泉の国に霊力(ちから)を提供するサーバーがあるのは、なんとなく、ほんのり、うっすら分かりました」 「ずいぶん自信なさげな理解だね」 「ははは、だって座学でも聞いたコトないし、黄泉の国にコンピューター的なモノがあるとは思わなくて」 だってねぇ、先日社長が口寄せした藤田家のみなさんも、そんなコト一言も言ってなかったし……って、ユリちゃんと社長の結婚のご挨拶だったから、それどころじゃなかったんだろうけど。 「いやいや、黄泉の国(むこう)は、あらゆる技術がこの世より上だよ。だって考えてこらん? 歴代の天才達が天寿を全うし、死後、黄泉の国に移り住んでるんだ。選ばれし天才達は精力的に技術開発と向上に努めてくれる。モノを造るのが大好きな天才達(ひとたち)にとって、この世だろうがあの世だろうが、やる事は変わらない。おかげで現世の百歩も先をいく世界だよ。特にリンゴの巨人が現世を去り黄泉の国に逝ってからというもの、さらに進化の速度が上がったんだ」 「えぇ!? あの人も(・・・・)!? 僕のスマホもリンゴですよ! ……そっか、そういう天才達が揃ってるんだ」 「そうだよ。自分は若いころ死にかけて黄泉の国に逝ったコトがあるけど、本当にすごかった。黄泉の国(むこう)の詳細は、詳しく話してはいけないコトになってるから具体的には言えないんだけど……まぁ、霊媒師になら多少はいいだろう」 「ぜひ! 話せるトコ、ギリギリまで教えてください!」 僕とジャッキーさんの会話に興味が沸いたのか、水渦(みうず)さんもガッツリこちらに向き直っている。 「いいよ、だけど本当にさわりだけだけどね。まず……そうねぇ、黄泉の国(むこう)の技術のナニがスゴイって、それはね、霊力の“れの字”も無い自分を結果、霊媒師ができるくらいの霊能者にしたってコトだよ」
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