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「ジャッキーさんには元々霊力が無かったって事ですか……? いや、だって、凄かったじゃないですか。光の道を呼んだ時もそうだし、フィギュアに憑依して遠隔であれだけ動かしてるのに……それで霊力が無いと言われても、今ひとつピンとこないんですが」
基本在宅勤務のジャッキーさんは、自身の分身、ジャッキーフィギュアに憑依して現場に向かう。
遠隔操作可能距離は、驚く事に陸続きなら東京から山口県まで余裕だと言っていた。
さすがに海を挟むと難易度が上がるそうだが、それでも出来ない訳ではないのだ。
それと会話。
当然だが依り代のフィギュアに声帯はない。
故にジャッキーさんの声は、聞かせたい対象の(生者、死者関係なく)脳内に遠隔で飛ばす。
しかもそれは一斉送信だ。
神奈川の現場でも、ジャッキーさんの声はその場にいた全員に届いている。
逆も然りで、僕や水渦さん、黒十字様に幽霊達の声もリアルタイムで聴こえているのだ。
まとめると、
フィギュアに分割した自分の魂を定着させ、臨機応変に、自由かつ激しく動かす事ができる。
視覚と聴覚のリンクを確立させた遠隔霊視。
視たもの聴いたものに対する回答を、自分の声を電気信号に変換し、最小限に抑えたタイムラグで対象となる複数の人達に送信する。
考えただけで目眩がしてきた。
直接現場に行った方がよっぽど楽だよ。
まさに鬼のマルチタスク。
「だから言ったじゃないですか。志村さんはハイスキルなんです。社内で……いえ、おそらく、偉そうに大御所ぶった島根の霊媒一族よりも上でしょうね」
「ちょ、水渦さん、めったなコト言ちゃダメだよ。瀬山一族を敵に回したら、ウチみたいな小さな会社、一捻りで潰されちゃうからね。それとね、自分、そこまでスゴクないから、まったく大げさだなぁ。で、いいから野菜を食べなさい」
島根の霊媒一族って、ユリちゃんのお爺さんの師匠、瀬山彰司さんの実家の事か。
日本で一番大きくて、一番力を持っている霊媒師一族だと言ってたよね。
そんな一族の人達よりも霊力があるんだ……。
「若いお嬢さんに褒められてオジサン浮かれちゃうよ。だけどねぇ、自分の霊力は借り物だからねぇ、実力じゃないんだ」
そう、眉を八の字に下げるジャッキーさんに、僕は続けて質問する。
「借り物? って、それは【第98霊力サーバー】から霊力をダウンロードしてるって事に関係あるんですかね」
「そりゃあもう、関係アリアリだよ。サーバーがなければ、自分はただのオジサンだからさ。なのにどうしてこうなったか……ちょっとだけ、自分の昔話を聞いてもらってもいいかい?」
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