第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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ジャッキーさんの話はこうだった。 妹さんの一件以来、家の中の雰囲気は重く暗いものになってしまった。 息子と娘に気を遣うご両親と、無理に明るく振る舞う妹さん。 会話すらぎごちなく居たたまれない。 そんな中、ジャッキーさんはひたすら自分を責めた。 こんなケガをしなければ、家族に迷惑をかけずにすんだのに、仲の良い家族のままでいられたのに……と。 この悪状況をなんとかししたい。 いや、なんとかしなくてはならない。 そこで思いついたのが義足の購入だった。 本来、義足を付けるのは、もっと後の予定だった。 だが、のんびりしてたら家族が壊れてしまう。 切断した足はまだまだ痛むものの、そうも言っていられない。 決して安い買い物ではないけれど、今後の人生を考えれば絶対に必要な物なのだ。 ジャッキーさんは貯金をはたいて7桁近い金額で義足を手に入れた。 だが義足を装備したリハビリは想像を超える辛さだったという。 「リハビリがね本当にキツかった。歩行うんぬん以前に、装着部分がすごく痛むんだ。それでも頑張るしかなかったからね。呪文のように『ジャッキー〇ェンよりイージーモード』と呟きながら耐えたんだ。そのうち長時間でなければ、家の中を歩き回るくらいはできるようになったんだけど……あの時は嬉しかったなぁ。なんたって1人でトイレに行けるんだもの」 ジャッキーさん……笑いながら話してるけど相当頑張ったんだろうな。 「お風呂もね、どうにか1人で入れるようになったんだ。トイレと風呂を自己完結できるようになって、ようやく気持ちに余裕が出て、自分も家族も笑顔が戻ってきたの。それからも必死にリハビリして、手すりにつかまれば階段も登れるようになって……数か月ぶりに自分の部屋に戻れた時は、最高に気分が良かった!」
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