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涙と鼻水でグチャグチャになりながら頭を抱えていると、下から昇る空気に粘度が加わった気がしたんだ。
それと同時にスタッフ達の口調も変わってね。
____そうだよな悔しいよなぁ、オマエはなにも悪くないよ、
____悪いのは、爆薬の量を間違えたあの男だ、
____あの男、いまだ毎日オマエに会いにくるけど上っ面だけ、
____帰ったらケロッと忘れて笑ってるんだぜ、
____辛いよなぁ、腹立つよなぁ、呪いたいよなぁ、
____ジャッキー! ジャッキー! ジャッキー!
____心を偽るな! 素直になれ! 許せないんだろう? 憎いんだろう?
下を覗けば、スタッフ達がニヤニヤと笑ってる。
ブォーブォーと音を立てる送風式救助マットがはちきれんばかりに膨らんで、
____ジャッキー、ここまで来いよ、
____マット目掛けて飛ぶんだ、
____義足だって構うもんか、受け止めてやるよ、
口の両端が耳にまで届きそうに広がって、両手でもって手招きをする彼らを、この時、初めて恐いと思ったんだ。
「と、飛ばない……自分は飛ばない……」
____飛ばないだぁ?
____意気地なしかよ、撮影押してるぜ? 迷惑かけんな、
____そうだ迷惑なんだよ、オマエの家族は肩身が狭いだろうなぁ、
____部屋に閉じこもって、金も稼がない穀潰しの息子、
____食うコトとクソするコトだけはいっちょ前ってか?
____ぎゃはははははは!
明らかに馬鹿にするように煽り始め、
____ジャッキー、ビビッて飛べませーん、
____見ろよ、ガタガタ震えてるぜ?
____元スタントマンが聞いて呆れるな、
____じゃあ、手伝ってやろう、
____ああ、そうだな、
____こちら側に引きずり込んでやる、
スタッフ達は総出で騒ぎ始めたんだ。
彼らは……うん、そうだよ、エイミーさんの言う通り、彼らは生者じゃなかった。
恨み辛みでこの世に縛られた地縛霊だったんだよ。
地を蹴った地縛霊達は、一瞬で屋上まで飛んできた。
「…………ッ!」
悲鳴すら出なかった。
霊達は自分の身体にしがみつき、
____堕ちろ、
と、自分と一緒に落ちていったんだ。
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