第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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◆ 自分は8月生まれでね。 夏の太陽は、植物や木々をこれでもかと育て上げ、廃ビルのまわりをぐるりと囲む、大木の数々も例にもれず、もっさりと豊かな枝葉を伸ばしていたんだ。 気を失っていた自分が再び目を覚ました時、空に星はなく、地縛霊達もいなくなっていた。 一緒に落ちたはずなのにと、見ればそこは木の上だった。 送風式救助マットに比べれば、数段、寝心地は劣るけど、それでも枝葉は自分を地面には落とさずに受け止めてくれたんだ。 スタントマンを離れて数年経つのに、染み付いた習慣は相変わらずで、すぐに身体に負傷箇所がないか確認した。 奇跡的に大きな怪我は無いようで、義足も外れていない、ホッとしたよ。 屋上と地面の間。 さて、どうやって降りようか。 自分の足が健在であれば、この程度の高さ、猫科動物のように音もなく飛び降りる事ができただろう。 だが今は義足だ。 着地の衝撃で接合部分を傷めるかもしれないし、最悪外れてしまうかもしれない。 外れたところでまた取り付ければいいのだが……無駄に痛い思いをするのはごめんだ。 星も月もない夜空、明かりと言えばここから遠くに見える街灯だけ。 夜目が効くはずもなく、安全に降りるには、へっぴり腰で秒速5cmくらいの慎重さが必要そうだ。 とその時。 遥かかなた天高く、金色(こんじき)に輝く何かが自分に迫ってくるのが見えた。 なんだあれは。 そう思う間もないくらいあっという間だった。 金色(こんじき)に輝く何かは、一本の道となり自分の足元までやってきた。
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