第十五章 霊媒師 打ち上げ、そして黄泉の国の話

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宝石の宇宙空間、そこにかかる光る道を夢中になって走り続け、もはや地球がどこにあるかもわからなくなっていた。 ずいぶん遠くまできたな……と、ふと立ち止まってよくよく見たら、すぐ目の前に坂道の頂点があったんだ。 光る道はまだまだ続いていたけど、頂点を境に下り坂に変わってね。 その向こうを見ると、地球の青をもう少し濃くしたような、大きな星へと繋がっていた。 なんのびっくりショーかと思うよね。 Tシャツにジャージの引きこもりオッサンが、ランニングで宇宙を渡り、別の星に到着しちゃったんだもの。 あぁそうか、これは夢なんだなと思ったよ。 宇宙に酸素はない、そんなの小学生だって知っている。 だけど、大きく深呼吸ができるんだ。 現実の訳がない。 やけにリアルで、やけに美しい夢だ。 こんな夢、めったに見られるものじゃない。 だったらエンジョイした方がお得じゃないのか? 地球でいう大気圏のようなゾーンを抜けた先、ご丁寧に地上まで道は続いていたから、あとは滑り台のようにシューっと降りていったんだ。 「ひゃっほーいっ!」 ぼふんっ! 地上に到着したと同時、柔らかな感触に身体全体が包まれた。 それは、あったかくてモチモチで、お花のような良い匂いがし、そしてモフモフしていたよ。 考えなしに滑り台を楽しんだが、地上がどうなっているのかも分からないのに、無謀な事をしてしまった。 たまたま柔らかな所に着地したから良いようなものの……って、どうせ夢なんだから、細かい事はどうでもいいや。 それにしてもコレなんだ? 感触としては、スタント時代に何百回とお世話になった送風式救助マットに似ている。 だがそれよりも、更に柔らかくて気持ちが良い。 ぽんよぽんよと、いつまでも波打っているのはよほど弾力がいいのだろう、素材はなんだ? とマットをナデナデしていたら、 キュゥン! 小動物のような可愛らしい鳴き声が間近に聞こえた。
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